メモ帳用ブログ

色々な雑記。

進撃の巨人ヴィンランド・サガは両方マガジン系(ヴィンランド・サガ週刊少年マガジンからアフタヌーンに移籍)の漫画だけあって、同じお題を出されて描かれた漫画という雰囲気がある。でもどちらもテーマに対する取り組み方や回答には個性が出ているし、違った面白さがある。
オリジナルアニメでもプロデューサーが共通している作品とかでスタッフは違うのに同じお題で作られていると感じる作品はたまにある。そういうのも楽しい。

西暦525年の事件の元凶は屍疫を流行らせた三眼だけど、村人に家族を殺された白大が、その三眼の命を助けてでも村人への復讐を頼んてしまったという流れは無理がないし、これで終わっていれば理不尽な昔話としての完成度は高かった。
でもこのときに黒山村の村人を全滅させておくのが白家の後々を考えれば一番良かったはず。三眼が白大の記憶を読んだ限りでは、白大は自分の家族を直接食べた村人(身体の欠損した病人)への復讐は望んでいたけど、それ以外の止めなかっただけの村人への復讐は望んでいなかったということなのか。サービス精神で白大の死体を使って復讐するくらいならついでに黒山村を全滅させても良かったのに。一見法屍者に見える白大の死体が村を襲撃して、生き残りもかなりいたせいで、白家には清代まで妙な伝承が残ってしまった。あくまで恩人は白大だけだから親類のその後は度外視なのか。それにしても清代まで村がほとんど不変で無傷なのは不自然だけど、運命のせいということでスルーしておく。
この間三眼は借元真目で周りの様子を確認したり傷が癒えないなりにたまに起きたりはしていた。白大の妹の子孫が白姓を継いだのは知っていたけど、その後子孫が黒山村に移住したことや、黒山村で白家に奇妙な伝承が囁かれていたこと、白小小の両親がその伝承のせいで自分の生贄に捧げられたことなどは知らなかった。知っている内容にはご都合的というか運命的な偏りがある。
借元真目の千里眼では映像は見れても音まで聞くには傀儡を経由する必要があるせいなんだろうけど、たぶん白家を積極的に見守ってたというよりは、適当に眺める中にたまたま白家絡みの出来事があったら覚えていたという程度なんだろう。三眼の関心は苗木>白家。白大に命を救われた恩は敵討ちをしたことで返したと言っていたし、それ以後はなるべく子孫に配慮するようにしてはいても、積極的に守ってきたわけではない。白小小に力を貸したのもあくまで知らずに犯した自分の不義理を精算するためで、白小小個人を助けようとしたわけではない。
白大の子孫が他の人間から迫害されたと知ったとしても、自分に新たな借りが発生しない限り、三眼は何も手助けしなかったはずだ。家族を殺されて狂った人間はこの作品にはいくらでもいるし、そういう人間が白大の妹を襲撃したとしても、おそらく何もしなかったはず。村人が法屍者化した(ように見える)白大を恐れて直接手出しをしなかったのだとしても、なおさらに逆恨みを集めてしまった可能性はある。白家が存続できたのは運が良かったというか運命のせいなのか。

また引用。今回は長め。
日「そんな時 オレの存在に気づいた近隣の村の連中が 自分たちの家族が巻きこれないよう先手を打ってきた」
「定期的に生贄を出すから自分たちは助けてくれ…ってな 怠け者のオレには願ってもない申し出だ 断る理由がない」
「生贄にされた連中は村で孤立してたり 土地や資産を奪いたいヤツだったり… 要は始末したい邪魔者を差し出してきたわけだ」
「お前の両親もその中の一人だった もし知っていたら 喰らったりしなかった」

中「周围几个村子的人有老一辈看出了有涅槃尸在杀人。他们为了祸害不引到自己家族。」
「特意呼唤了咱,说可以定时献出些祭品来交换他们的安全。对于本身也懒散的咱,这确实是不想拒绝的好事。」
「之后他们便把村子里被孤立的人,对自己不利的人,想夺取其土地家产之人送了过来。」
「直到咱恩公的后人, 他们…本不该死的,」

直訳「周りのいくつかの村の人間には人を殺してる法屍者がいるのに気付いた年寄りがいた。彼らは自分の家族が災いに巻き込まれないようにした。」
「わざわざオレに呼びかけて、彼らの安全と引き代えに定期的な生贄を差し出せると言ってきた。怠け者の俺としても、それは確かに断りたくない良いことだった。」
「それから彼らはすぐに村で孤立している人間や、自分に不利益な人間や、土地や財産を奪いたい人間を送ってきた。」
「オレの恩人の子孫まで、 彼らは…本来死ぬべきではなかった、」

三眼は1、2年前に傷が癒えたばかりだと発言している。白小小は黒山村の近くに三眼が出現したのは去年だと認識している。生贄を捧げられるようになったのもこの1年だという。三眼が疑似屍者的な傀儡としてまた死体を操り出したのもその前後だ。それまでの黒山村は屍者とはずっと関わりを持っていなかった。
日本語版だと三眼が複数の村から生贄を受け取っているとわかりにくくされ、3つの村が生贄を捧げているという村長の発言も削られている。そのせいで、黒山村からは白小小の両親しか生贄に捧げられていないはずなのに、それ以外の生贄もなぜかどこからか捧げられている理由がわかりにくくなっていた。白小小の両親以外にも現在の黒山村から生贄にされた人間がいるわけではないし(狭い村だからすぐにバレる)、千年の間の別の時期に黒山村から生贄を捧げられたわけでもない(三眼の傷が癒えていない)。
あと細かいところを言うと、白小小の両親は白家として村で孤立していたから生贄にしやすかっただけで、「要は始末したい邪魔者を差し出してきたわけだ」なわけではない。

黒山村の西暦525年の事件は、伝承だと体が欠損する病気で苦しむ村人に白大が薬として屍者の血(中文版では白大の血)を与えたら治療に失敗して死なせてしまったことになっている。本来の出来事だと、村で唯一の薬師である白大が半年村を留守にしている間、狂気にかられた村人が白大の家族を殺して食らってしまい、白大は敵を討とうとしたが返り討ちにされ、元凶である三眼の命を助けてでも敵討ちを頼まなくてはならなくなった、敵討ちを頼まれた三眼は良かれと思って白大の死体を傀儡にして村人を100人近く殺害した、という経緯。村人は三眼の存在をろくに認識せず、白大と接触したことなどは全く知らないので、白大が法屍者となって蘇り復讐を果たしたと思ったはず。
個人的には伝承でも本来の出来事でも白家の子孫が迫害を受ける理由の程度としてそう違いはないんじゃと感じる。大昔の伝承や記録が正確に伝わらないのも当然のことで、誰が嘘をついたとかの話じゃない。白大の妹が白姓を残したことやその子孫が黒山村に移り住んだことだって正確に伝えられている訳ではない。妹の子孫が移り住んだ時には白家と村人はどうにかうまくやれたはずだし、だからこそ白家はずっと存続できたはず。
それでも清代の農民である黒山村村民(白小小含む)にとってどちらが先に手を出したのかという点は譲れない部分らしい。みんな家の名誉と正当性の誇示が最重要という現代日本からするとヤクザのような価値を持っている。ついでに高皓光も非常にヤクザ的。一応黄二果は先祖の因縁なんてろくでもないとは思っているけど、実力的にも役の重要度的にもツッコミ力不足。
もし伝承が正しく伝わっていれば白家は復讐の連鎖で滅んでいた可能性もあるにしても、黒山村の住人は額に目のある屍者に警戒できたかもしれないので、ほとんどの人間にとってはそちらのほうが良かったはず。
三眼の話を話を聞いたみんなの反応は日本語版だと
村長「そ…そんな まさか…」
村人「俺たちの祖先の話が嘘だった…というのか」
黄二果「うわ… マジかよ それ?」
となっていて、村人たちは三眼の話をなぜか頭から信じている。その上に先祖が無実の人間を殺したことそのものよりも、先祖が嘘をついたと無根拠に断定してそこに衝撃を受けたような表現になっている。「嘘」は強い言葉だからどうしてもそこに気持ちが引っかかってしまう。「嘘だった…というのか?」とか「間違いだった…というのか」ならすんなり読めたかも。
黄二果も三眼の話を本当だと思った上で昔の村人の所業に引いているニュアンス。
中文版だと
村長「怎会… 不该呀…」
村人「我们各家各户都有当时的(引用注:信史?)…」
黄二果「真的假的?」
村長「まさか… あるはずがない…」
村人「俺たちみんなの家には当時の(引用注:確かな歴史?)があるんだ…」
黄二果「マジで?」
村人たちは信じていた歴史とは違う祖先の悪行を信じきれずにいる。先祖が嘘ついたのを気にしてるとかそういう話じゃない。
黄二果の「真的假的?」も引いているというより真偽を疑っているニュアンス。

世界は陰と陽のバランスでできているとするのが東洋的陰陽論で、光は完全で闇は不完全とするのが西洋的一元論。ただし東洋でも天は地より上として扱われることが多いし、西洋でもグノーシス主義錬金術などの異端では陰陽論的な思想が強かったりと、簡単に割り切れない部分がある。