メモ帳用ブログ

色々な雑記。

中世のキリスト教徒は学者でも地球平面説を信じていたという話がデマだというのは結構有名。
中世の知識人の関心を集めていたのはあくまで地動説と天動説の対立だ。でも教会関係者が地球平面説を信じるくらいに愚かである方が、進歩的な科学と後進的な宗教という対比がわかりやすい物語になる。だからそういうデマが広がった。

中世の地球球体説に関する近年の研究では「8世紀以降、言及に値する宇宙論者で地球が球体であることに疑問を挟む者はいなくなった[107]。ただし、これらの知識人の著作は大衆の意見に大きな影響を持たなかったかもしれず、一般大衆が世界の形状をどう考えていたか、そもそも彼らがそういう疑問を持つことがあったかは不明である。

中世にも現在にも地球は平面だと信じる人間はいるが、むしろ彼らは教会の見解に反している。教会の見解を知らずに地球平面説を信じていたなら単に無教養な人だし、見解を知って信じていたなら主流な教えに反するカルト信者だ。近年のカルト信者は「地球平面説という神話」から逆説的に発生してさえいるのかもしれない。

自分は物事をわかりやすい物語にしすぎる人間は詐欺師だと思っている。
作家とかはいい意味で詐欺師だ。うまく騙されたがっている人をうまく騙せばWINWIN。カニカマを買いたい人にカニカマを売るのは褒められこそすれ責められる謂れはない。自分はカニよりカニカマが好きだ。安いカニより高価で美味しいカニカマなんて製品もある。問題になるのはカニカマをカニだと騙して売りつけた場合や、カニと明言せずとも誤解を生む売り方をした場合だ。

進撃の巨人でアニの義父を義父と見せかけて実は実父だったと勘違いする人がいるのはわからなくもないけど、ケニーをリヴァイの実父と勘違いしている人さえたまに見かけるんだから、ネットは広大だ。
アニの「男は…膝をついて私に謝った (中略) すべて捨てていいから帰ってきてくれと… 男は……私の父親だった 私を…自分の娘だと思っていた」というセリフ。これは普通に考えれば、アニは自分の義父兼訓練者をそれまでは義理だろうと親子と呼べる間柄ではないただの「男」だと思っていたが、その男が利用するために引き取ったはずのアニを自分の娘だと思うようになっていき、最終的には自分の利益よりもアニの身のほうが大事だと伝えたことで、アニもその男がすでに自分の父親になっていたことに気がついた、という意味だ。ジークがクサヴァーを父親と呼ぶのと似たようなことだ。ニュアンスが少しでもズレると男は実父だったと勘違いされかねないセリフだけど、各言語の翻訳版だとどうなっているんだろう。

先手を打って書いておく。
宮崎監督の『風立ちぬ』でカプローニ伯爵はメフィストフェレスと位置づけられている。カプローニが初登場する場面で絵コンテのACTION欄には「狂気をやどすドup メフィストフェレス」と注釈してある。また『風立ちぬ』のパンフレットに掲載されたコメントによると、カプローニの声優を務めた野村萬斎さんははじめカプローニを聖人のように演じようとしたが、宮崎監督からカプローニは二郎にとってのメフィストフェレスだと言われ、演じ方を変えたそうだ。宮崎監督はストーリーを練りながら絵コンテや制作に入ることで有名な監督だが、カプローニがメフィストフェレスだというイメージは最初から最後まで一貫している。メフィストフェレスは人間と契約して願いを叶える代わりに魂を奪う悪魔だ。
つまり二郎は『ファウスト』でメフィストフェレスと契約したファウスト博士のポジションになる。
結果的にファウスト博士に弄ばれて非業の死を遂げるものの、最後にファウスト博士の魂を救うヒロイン・グレートヒェンと菜穂子を重ねられなくもない。ただ菜穂子とグレートヒェンの近似は最初からの構想というよりは結果的なもののようだ。ラストはスケジュールに追われてとりあえず話を纏め、後で改めて物語を解釈してセリフなどを修正したことは多くのインタビューで自白している。

――『風立ちぬ』についてお聞きします。長編最後の場面のセリフを「あなたきて」から「あなた生きて」に変えたとプロデューサーが以前にお話されていました。宮崎監督が考えていたものとは違うものになったと思いますが、長編最後の作品として悔いのないものになったのか。また今変えたことについてどう思っていますか?


宮崎監督:『風立ちぬ』の最後については本当に煩悶しました。なぜ煩悶したかというと、とにかく絵コンテを上げなければいけない。制作デスクにさんきちという女の子がいますが、本当に恐ろしいです(笑)。他のスタッフと話していると床に「10分にしてください」って貼ってあるとかね。机の中に色々な叱咤激励が貼ってありまして、そんなことはどうでもいいんですけど(笑)。とにかく絵コンテを形にしないことにはどうにもならないので、とにかく形にしようと形にしたのが追い詰められた実態です。それで、やっぱりこれはダメだなと思いながらその時間に絵が変えられなくてもセリフは変えられますから、自分で冷静になって仕切り直しにしました。こんなこと話してもしょうがないですが、最後の草原はいったいどこなんだろう――これは煉獄であると仮説を立てたのです。ということは、カプローニも堀越二郎も亡くなってそこで再会してるんだ、そう思いました。それから奈緒子は、ベアトリーチェだ、だから迷わないでこっちに行きなさい、と言う役として出てくるんだって。言いはじめたら自分でこんがらがりまして、それでやめたんですよね。やめたことによってすっきりしたんです。『神曲』なんて一生懸命読むからいけないんですよね(笑)。

宮崎監督は一旦はダンテの『神曲』になぞらえて菜穂子をヒロインのベアトリーチェと重ねる解釈をしようとしたが、やめたのだそうだ。それにより菜穂子の「来て」を「生きて」に変える発想が湧いたようだ。ダンテの『神曲』とゲーテの『ファウスト』は比較的似通った構成の作品であり、ヒロインの果たす聖母的な役割にも近いものがある。当然ゲーテは高名な古典文学である『新曲』を知っており、ダンテについての小論も書いている。また『ファウスト』には『神曲』を意識して書いたことが読み取れる部分があるという。


天安門事件での政府の判断を「党は断固とした措置で、党と国家の生死存亡がかかる闘争に打ち勝った」と称賛。中国は二重思考的国家なのでアメリカの圧力は非難するけど、自らが行う武力弾圧は自画自賛する。現状の国家体制が維持されるべきという結論ありき。
ついでにいえば、天安門事件は強硬派の活動家に対して政府がなるべく穏当に対応してやむを得ない犠牲者が出ただけだった、と中国政府を擁護した左巻きの論者を自ら裏切っている。
天安門事件に対してこの発言以下の言説をブログに書いていたことがあるので映画評論家の町山智浩さんには好感が持てない。2004年に最初に投稿した分だけなら武力弾圧は良くないがそれを過大評価するのも良くないという意味に取れなくもないし、それなら同意もできる。確かに天安門の広場では虐殺は起きず、死者が出たのは広場の外だった。
でも追補の部分で「この事件で評価すべきは、柴玲(引用者注:非暴力の民主化デモを行った学生のリーダーたちの1人。広場責任者。事件後に政府はナンバー4のリーダーと認定)たちの冷酷な企みにも負けずに無血撤収を成功させた学生たちと、柴玲たちが期待していたような最悪の事態を食い止めた軍側の指揮者たちである」と断言しているのには同意しがたい。まず中国は人民が頭に付くとはいえ民主主義国家を名乗っているんだから、非暴力デモを武力弾圧して怪我人が続出したり1人でも死亡者が出たりしたら、本来は大問題だ。確かに、民主派リーダーの中に政府が建前をかなぐり捨てて武力弾圧に走ることを予想しながらも強硬姿勢を崩さなかった者がいて、その相談をデモの参加者や支持者にしなかったのだから、その点は責任を問われて当然だ。それでもデモの支持者を多数殺害する決定をしたのはあくまで軍側の指揮者たちだ。学生のリーダーたちは虐殺を引き起こすために積極的な工作をしたのではないし、支持者の自由意志を奪ったのでもないし、中国政府が主張するようにアメリカなど西側諸国の工作員になったのでもない。これで冷酷な学生リーダーたちと評価すべき軍側の指揮者たち、という構図を作り上げるのは欺瞞だろう。
町山さんが紹介している2つの記事も暴力的な学生・市民と穏健な軍という論調のものだ。1つは英米の情報操作を示唆さえしている。
純粋な映画評論家としての町山さんの評価はともかく、政治的スタンスは嫌いだ。左翼思想家でも、チベット弾圧を正当化する左翼とか、その手の左翼を自分は軽蔑している。
左翼でいうと宮崎駿監督も相当に問題発言が多い。それでも、なるべく欺瞞なく意見を述べようとしていることは伝わる。かつて毛沢東をいい人だと思い込もうとしていたことも下手にごまかさず、正当化せず、素直に心境の変化を語っている。細かい部分では納得しがたい発言も多いが、根本的には尊敬できる。傑物である毛沢東への憧れをなんだかんだ捨てきれていない正直さも理解できる。
ところで以前、若き宮崎監督がミリタリアクションシーンのアニメーターを務めたということでアニメ映画『空飛ぶゆうれい船』を期待して見たんだけど、つまらなかった。陰謀論とミエミエでお粗末な善悪の逆転があるだけ。後に宮崎監督自身が理屈に走りすぎていて面白い作品ではないと語っていたのを知って、その通りだと納得できた。この『空飛ぶゆうれい船』が、町山智浩さんが映画にハマり評論家になるきっかけとなった作品だということも後に知った。いかにもな政治思想の持ち主といかにもな政治姿勢の作品の縁だと納得できた。

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うる星やつら(原作)のサブキャラのメガネ→うる星やつら(アニメ版)のメインキャラのメガネ→機動警察パトレイバー(アニメ版)のシゲさん→機動警察パトレイバー(漫画版、原作に非ず)に逆輸入?されたシゲさん