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色々な雑記。

荒川弘先生コミカライズの『アルスラーン戦記』は、原作の田中芳樹先生のとんがった部分と荒川弘先生のとんがった部分の両方が取れてて読みやすいし、面白い。創作物はとんがった部分が取れすぎても面白みがなくなってしまうものだけど、荒川版コミカライズは個人的にちょうどいい塩梅。

発表当時は挿絵が天野喜孝先生だったりの売り出し方もあって耽美ファンタジー的に捉えられることが多かった『アルスラーン戦記』。それが荒川版の新コミカライズでは原作の要素をなるべく拾いつつも正しく少年漫画に変換されてる。西アジアをモデルした三国志風の骨太な戦記+アクションファンタジーの印象。あらすじやセリフはほぼそのままでも、絵柄などの表現の違いによって受けるイメージも変わってくる。荒川版を元にしたはずのアニメだと、強引に耽美へ寄せようとしたりコミカライズ分より先の話へ進んだりと、なんか変わったバランスになってた。

荒川版コミカライズは深窓の美女設定のキャラまでやや骨太なきらいはあるけど、登場人物の表情やコマ割りでの魅せ方がうまいから総合的には魅力的な画作りになっている。アルスラーンたち主人公陣営の美男・美女キャラたちは武人らしくて格好良い。ヒルメスたちライバル陣営やルシタニアなどの敵陣営、中年・老人キャラや偉丈夫キャラの描写に力が入っているのが特に嬉しいポイント。個人的にはザンデがコミカライズで一番好感度が上がったキャラだ。ゴツいけど主要キャラの中では若い部類の20歳前後で精神的にも未熟っていうのがよく表現されてる。

現在に読む上での思想的なアップデートも適度でいい感じ。一神教の独善への批判をやりすぎて別の独善にならないようにフォローしたりとか、アルスラーンナルサスたちの理想主義・急進性に歩調を合わせられなかった伝統重視層の描写も厚くしたりとか。