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天気の子の発売日

天気の子

天気の子

  • 発売日: 2020/03/04
  • メディア: Prime Video
昨日は『天気の子』の発売日だった。
思春期的エンタメど真ん中の『君の名は。』。興行的には歴史的な大ヒットを収めた割にはというかだからこそなのか、思春期というむず痒い気持ちを扱っているからなのか、大人げない批判をそれなりに見かけた映画だけど、自分は大好きだ。次回作である『天気の子』は思春期にまつわる苦い気持ちを中心に据えているだけに、こっちも大ヒットしたけどさらに賛否が分かれた印象。こっちも大好きだ。主人公が○を持ち出すのは映画『スタンド・バイ・ミー』を思い出したり。日本でやるのは無理がある舞台装置だけど、思春期の衝動性と暴力性と蟷螂の斧の象徴としてどうしても持たせたかったのかな。
帆高は地方で鬱屈として都会に家出してきた少年というジュブナイル主人公のど真ん中。東京で恋愛も含めて危険な方向のモラトリアムへ突き進んでいく。多分この時点で駄目な人は駄目なのかも。ただ思春期の少年が良くない方向性でも成功体験を積み重ねればはまり込んでしまう気持ちは想像できる。テンションの振り幅のエスカレートを最大限に引き出した演出も気持ちいい。とっかかりさえ問題なければ自然に帆高の共犯者な気分になる。「気分」の演出の仕方が本当に念入りだ。
須賀圭介・夏美たち年長者の描写も良い。彼ら年長たちは帆高と事務的に接したり、縁が薄いからこそ気軽にギブアンドテイクの関係を築いたりし、徐々に本当の付き合いを深める。そして一旦は「社会的に正しく」突き放すが、自分の中の共犯者になりたがっている心を自覚させられる。多くの年長たちが口々に狂いを含めてありのままである世界を正さずにいることを許してくれる。そして社会の大人たち皆が帆高という子供のワガママを許してくれる共犯者になってくれるとしたら、帆高は自分自身をどう思うのか。
具体的な理屈を欠いたまま、身近な奇跡のエスカレートがやがて世界を揺るがしていく部分はやはりセカイ系の影響が強い。監督の経歴的にもそちらからの影響は見逃せない。最後の東京の様子だって間違いなくご都合だろう。それでも『天気の子』はセカイ系の作品というよりもセカイ系の罪を自覚しつつその先にあるものを探そうとしている作品だと思う。
細かいところでは、作中で一番ヘイトを集めるように設計されている風俗スカウトマンにさえ、妻子とのささやかな生活があることが抜かりなく描かれているところが良い。
こういう少と多を選ぶ話だと、愛する少のために多を敵に回して暴走しつつ、最後は多を破滅させるか多と小がどうにか折り合いをつけるかというのがうまくまとまりやすいかな。二者択一で少を選ぶのはえこひいき以外にありえない。それでも、家族愛とか恋愛とかじゃなくて、最初から社会として多と少を等しくすくい上げられるのが本当の理想だということを個人的には忘れたくない。綺麗事は叶えるのが難しいから忘れないために唱え続ける必要があるものであって、他人を押しつぶすために唱えるものではないはず。見ず知らずの他人のワガママはどの程度まで一緒に背負えるのか。