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色々な雑記。

関係の重ね合わせ

重ね合わせでキャラを描写するっていうのは定番の手法。エヴァだと主人公の碇シンジが重ねられる相手は主に碇ゲンドウ葛城ミサト加持リョウジの3人。
葛城ミサトは初期構想だともう1人の主人公という位置づけだった。シンジとミサトは父親に複雑な感情を持つもの同士。シンジ・加持・ゲンドウの3人はそれぞれ違った方法で人と向き合うことから逃げている。
重ね合わせはキャラだけでなく関係を見せる場合にも使われる。
ミサトと加持の関係はシンジとアスカの関係に重ねられる。生々しい男女の関係に近く、求め合うと同時に傷つけ合っている。
ゲンドウとユイの関係はシンジとアスカの関係に重ねられる。屈折した孤独を持つ男とそれを拒絶しない、あるいは受け止める女。Qではこの重ね合わせがより深められている。愛した女と再会するために世界を危機に陥れる男というゲンドウの設定を旧シリーズから引き継いでいるだけでなく、シンジも無意識とはいえ積極的に同じ過ちを犯してしまった。旧シリーズの完全に成り行きで(しいていえばミサトとアスカのため)サードインパクトのトリガーにされたシンジとは正反対だ。
新劇場版のシンジは破では前向きにゲンドウを理解しようとしていた。ゲンドウの態度もやや和らいでいるように見えた。しかしニアサードインパクトの起きた最終シーンで、結局のところゲンドウにとってのシンジは計画に利用するための駒でしかなかったことが示される。
Qでシンジは冬月から自分の母親である碇ユイ(ゲンドウが婿入りした旧シリーズとは違って新劇場版では旧姓が綾波)がエヴァのコアと融合してしまった顛末を聞かされる。ゲンドウがシンジに目もくれずに目指した野望が、世界を捨ててでも愛する女を取り戻すという、自分が犯しかけた過ちと同じものだったことを思い知らされる。最悪の形で父親の願いを理解してしまう。そして最終シーンで、シンジはアスカや新たなレイと歩いていき、父親の思い出の品だった音楽プレイヤーを置き去りにする。
批判の多いQだけど、シンジとゲンドウの重ね合わせと理解、父からの卒業という部分では旧シリーズよりも良くできている。