メモ帳用ブログ

色々な雑記。

猿の手のような話は、持ち主の願いが紛れもなく叶えられながらも、それがどれだけ歪んだかたちになるかというブラックなウィットが面白さのポイント。原典の猿の手もフォロワー作品もそこは抑えている。
猿の手は人間が運命を曲げようとするとしっぺを食らう、人間は運命に従うべきという教訓のホラー。運命を曲げて得た結果とそれを上回る代償の両方が描写される。そういう教訓を名目にしつつ、予想外の代償をとんちのように楽しむためにも、願った内容は一応叶うというルールは厳しく守られる。願いが全く叶わず不幸な目にだけあうという筋書きだと予想を外しすぎて楽しみにくくなる。
日月同錯は人間は理不尽な運命に抗うべきという話なので、理不尽な運命の一部である三眼は義理堅そうに振る舞っていても、自分の都合で守る約束と破る約束を決めてしまう。すべては三眼の一存で決まるので、予想外以前に予想ができない。おまけに村人から接触しなくても三眼のほうからランダムに村人を食ってくる。理不尽な運命とはそういうものと言われればそうなんだろうけど。
黒山村のエピソードは一見話の筋で予想を裏切って楽しませてくれる話っぽいのに、うまく予想させてうまく裏切ったり応えたりしてくれるポイントがほとんどない。黒山村の住人は見たまんま下品で実は村長が白家を裏切っていたと明かされてもなんの意外性もないし、真相はヒントをもらって予想する前から三眼が喋ってしまうし、三眼は契約よりも自分の贔屓を優先する。
三眼が恩人の子孫を食べてしまった不義理を帳消しにするため、子孫が村人に復讐するように仕向けて力を貸し、安全を守るという村人との契約に大きく違反しないためにも復讐が始まる前に自殺するって部分はナシではない。でも三眼が自分の筋書きを実現するために白小小に無理矢理復讐を押し付けた感があるのは好感が持てない。押し付けられた道が少し違うだけで白小小は生存できたのに。白小小を理不尽な運命の被害者にするために今のストーリーになっているのはわかる。最後の最後で子どもたちを目の前にして目を覚ますというオチをやるために視野狭窄に陥らせているのもわかる。でも筋書きありきすぎて肉付けの不自然さが気になってしまう。
このエピソードでわかりやすくドキッとして楽しめるのはグロだけで、ホラーとしても纏まった筋になっていない。