メモ帳用ブログ

色々な雑記。

締め方を見るに、黒山村のエピソードで伝えたいことは残酷な運命・天に抗えということらしい。屍者も含めて人は天意に弄ばれている。そう読める過程になっているかは置いておく。
つまり単なる首の挿げ替えでない本質的な革命の話だ。ちなみに中国で革命を否定すると逮捕されます。王政や身分制度の肯定的も思想統制対象。だけど反体制の肯定も規制対象です。
革命のテーマと連動して、古い価値観は捨てて世界を変えなくてはならないということも示されている。高皓光が瀕死の白小小に語ったところによれば、世界を本当に変える力とは屍者や法師の力ではなく、誰でも使える科学の力だそうだ。科学の力が欧米から伝わったことで中国は変わる。
この内容自体はもっともだ。でも古い力によって古い勢力が大量虐殺された直後に、欧米の中国進出を肯定的に捉えているように思える発言が来るせいで、高皓光が弱肉強食の世界観を肯定しているように見えかねないのは不親切かも。本当はどちらかというと、列強と互角に渡り合うためにも中国は中国人自身の手によって進歩しなくてはいけない、突出した個人の力に頼るのではなく皆の力を合わせなくてはいけない、ということが言いたいんだと思う。これもテーマとして重要な部分だ。
ただし、現状では本当の自由意志を持っているといえる人間、つまり天や運命に抗える人間とは三真同月令に選ばれた人間だけなのだ。高皓光が自分の理想とする科学的で平等な世界を実現するためには、まず自分が選ばれし者として運命や天を変えなくてはならない。高皓光はこの捻れた世界にまだ気がついていない。
物語全体のテーマは革命であり、このエピソードでもそれが示されている。さらにこのエピソード自体のテーマとしては嘘にも重きが置かれている。黒山村の生者たちは皆、他人を貶めるためだけでなく自分の大切な相手を守るためにも真実を隠す。白小小の両親は白小小に、白小小は阿毛たち村の子どもに、村長は自分の家族を守るため自分以外の村人たちに嘘をついた。村人も多くは白家が生贄を押し付けられていることに気付きながらも自分の家族のために見てみぬふりをしていた。それに対し、三眼は嘘をつかず天経地義(古い秩序に都合のいい道理)に従うが、何も救わない。ちなみに中文版では高皓光も瀕死の白小小を運び出すため、村の子どもたちに対して「彼女はもう死んだ(她已经死了。)」と嘘をついている。
三眼の告発した内容は、西暦1906年の部分に関しては村長からの反論がないので全て事実だ。西暦525年の部分に関しても白小小に記憶を渡したことで全てが事実だと裏付けられた。日本語版ではやや曖昧だけど中文版を見るに、三眼は白小小へ西暦525年の真実だけでなく全ての記憶を受け継がせた。白小小が三眼の隠された本心などに驚いた様子がなく、その後も全く振り返っていないないので、三眼が白小小たちに言葉で語った内容と三眼の記憶には一切の齟齬はなかったとわかる。三眼は彼の思う真実を包み隠さずに語っていた。