メモ帳用ブログ

色々な雑記。

エンタメ作品ならその作品の狙いはなるべく早く滞りなく飲み込めるようになっていると見やすい。後でどんでん返しする場合ならなおさら最初はミスリードした狙いをうまく届ける必要がある。
ハリウッド映画の『All You Need Is Kill』は日本のライトノベルが原作だ(英語圏でのタイトルは異なる)。宇宙からの侵略者にタイムループで立ち向かうという骨子はそのままに、いかにもハリウッドらしく大胆な改変が加えられている。その1つに原作では若い日本人の新兵だった主人公が映画ではトム・クルーズ演じる米軍の少佐になっているというものがある。だが少佐と言っても戦場経験のない広報官なので、ずぶの素人がループを通じて強靭な兵士に成長するという原作の核心は守られている。映画の導入はこうだ。ケイジ少佐は派遣先の統合防衛軍から比較的安全な戦場で兵士に混じって撮影を行うよう命令される。だが恐怖心から命令を拒絶し、逮捕されかかった末に逃げ出してしまう。それまで広報官として数多くの兵士を戦場に駆り立てる仕事をしてきたにも関わらずにだ。ケイジ少佐は即座に取り押さえられ、逃亡兵らしく一兵卒として最前線へ送られることになる。自業自得だと思いつつ気持ちはわからなくもない良い塩梅だ。ここであまりにも理不尽に戦場に送られると真の敵が上官になってしまうし、主人公が最初から敵を駆逐する信念を持っていたら原作とは全くの別物になってしまう。
ラストも大幅に改変されているが、中盤に入ったところでその布石となる設定の改変が明示されるから親切ではある。
日本原作のハリウッド映画というと出来が良くないイメージが強いが先入観を裏切ってよくまとまった映画だ。


実写版の導入ということで思い出した作品がもう1つある。
お〜い!竜馬』の作画家でもある小山ゆう先生の代表作の1つが『あずみ』だ。『あずみ』は戦国時代末期に暗殺者として育てられた少女を主人公とする漫画で、厳密には忍者ではないが序盤に忍者ものだと定番のショッキングな展開がある。その展開は冷静に考えると全く非合理的なのだが、それでもお約束であることと作者独特の勢いで妙に納得感をもって受け入れられてしまう。小山ゆう先生の泥臭く力強い絵が、当時ならこんな異常な価値観も必要だったのかもしれないと理屈ではなく迫力でねじ伏せてくる。
この『あずみ』には日本で映画化された実写版がある。だが現代的で清潔な美男美女がメインキャラクターを演じ、また映像面でも原作の泥臭さを出すことはできなかったため、雰囲気は全くの別物になった。そのため原作に基づいた序盤のストーリー展開がただ異常者が非合理的な行為に走っているようにしか見えなくなってしまった。映画全体の評判もあまり芳しくなかった。
皆川亮二先生作で同じく小学館出版『D-LIVE!!』でも、『あずみ』の実写版の出来に軽く触れているセリフがある。