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色々な雑記。

黒山村の村長や趙炎は自分の策で自分の家族を守ろうとして多くの犠牲者を出した。両者ともに正当防衛というよりは、緊急避難や自力救済を建前として利用していた色合いが強い。自力救済はそれで得をできる無法な強者に有利な理論で、近代的な平等と噛み合わない部分がある。封建社会との結びつきも強い。大抵の国や地域では法整備が進むにつれ規制の対象になる。ただし緊急性がある場合には緊急避難に準じた判断によって認められることがある。平等よりも自由を重んじる英米では自力救済の認められる余地が広い。
日本では江戸時代でも許可が出れば仇討ちが行えたけど、あくまで武士が体面や家督のために行うものに限られていた。ついでに日本だと、室町時代には自力救済による私闘が発展し、町ぐるみ、武士団ぐるみの殺し合いに至ることがしばしばあった。そのため幕府は喧嘩両成敗法という、喧嘩した両方に対して理非を問わずに制裁を加える法を定めた。私闘の抑制には繋がったが乱暴な運用には批判も多く、江戸時代には法律化されずに慣習法としてのみ残った。
近代法からすると、国家は自力救済という手段を規制することでより良く基本的人権を守れるようになるといえるかもしれない。他方で国家間の権利侵害では違法行為による自力救済が認められる場合がある。
ただ物語の題材にするならたとえ人権の敵になろうが自力救済のストーリーのほうが盛り上がりやすい。