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山村のような濃密な人間関係がある場所で秘密を守るのは難しい。
南北朝時代の黒山村では、家族が殺害された事件の真相が白大が帰宅した直後に発覚した。仙丹をまだ村人に処方していなかったくらいにすぐだった。暴徒と化した屍疫患者が白大の家族を襲ったということを目撃者の子どもが暴露した。白大の家は村外れに位置していたとはいえ、村の全員が気付いていたはずだ。
清代の白家が白大の家と同じ場所にあるのかは定かではない。一応、孤立気味だったことを考えれば同じく村外れに位置していてもおかしくないとは言える。そうだったとしても、例えば村の大人が集会を開き全員の合意を取って白家を生贄に決定するような出来事があったとしたら、流石に白家の3人は気付いただろう。大人たちが謎の集会を開いていたら家族の子どもたちだって気が付く。白小小は大人たちから迫害されるようになった後も子どもたちとは仲良くしていた。もし子どもが大人の悪巧みを目撃していたら、白大と同じく白小小も子どもからそれを教えてもらえたはずだ。
だけど実際はむしろ白小小は子どもたちに対して真実を隠す側に回っていた。どうも黒山村は混乱を避けるためか、建前としては生贄どころか屍者の支配下に置かれていることさえ大っぴらに言うべきでないことと見做されていたようだ。子どもたちに不安を与えないために嘘をつくという点に限っては、村の大人たちと白小小は共犯関係にあった。個人的にはこうした部分に現実味が感じられず、村の人間関係を想像するのが難しくなっている。それでもここはそういうものとして受け入れておく。白小小の両親も白小小を守るために嘘をついていた。
白小小の父親を生贄にする約束を三眼と結んだのはおそらく村長の独断に近いものだっただろう。少なくとも村人全員集合の会議などはなかったはずだ。村長が高皓光に強弁した内容が、村で共有されていた2段階目の建前だったようだ。村長は自分が影響力を持つ村の秩序が崩れたり、自分が槍玉に挙げられて生贄にされることを防ぐために、なんとしてもその建前を守ろうとする他なかった。そして村の大人たちも自分の家族が被害を受けることを避けるために白家が犠牲となることを黙認し、むしろ押し付けようとさえした。この状況は一年続いた。村長が自分から三眼へ交渉を持ちかけたことに気付いていた村人も少なからずいただろうが口に出したりはしなかっただろう。閉じた人間関係で一度大っぴらになった秘密を守ることはほぼ不可能だ。