メモ帳用ブログ

色々な雑記。

三眼の貸し借り勘定

①西暦524年頃に、約200歳の三眼が黒山村で屍疫を蔓延させる→貸し借りなし
三眼は西暦1906年時点で生きず死なずで1600年と発言。生前を含んだカウントかは不明。法屍者なので生前は求法者。深い山の中の黒山村に現れるまで何をしていたのかは不明。三眼にとって屍者が人間を食うことは天経地義なので、貸し借りなし。


②西暦525年頃、住む山を出て遠くの山で薬草取りをしようとした白大を傀儡で追跡し、同行者の阿柴を殺害→貸し借りなし
白大は村で唯一の医療従事者。元は文字もろくに読めなかったが、村のために文字と医学を修める。屍疫に対処するため薬草を集めるが、近くの山では足りなくなり、数百km離れた山へ向かう。そこを三眼の傀儡に襲われる。三眼の天賦神通である借元真目には千里眼の機能が含まれている。三眼にとって食事の邪魔をする者を殺すことは当然なので、貸し借りなし。


③白大を殺す前に姜明子に気付き、勝負を挑むが自害に追い込まれる→この借りは姜明子より長生きすることで返す

「倒霉!(×13)
不过只是想安安稳稳的,默默无闻的享受长生的乐趣罢了。
为啥要这么伤害咱!
唉……
看着吧,在你死后,咱还能活!」

(直訳)
「ついてねえ!(×13)
ただ平々穏々で静かに長生きを楽しみたいだけだ。
どうしてオレをこんなに傷つけるんだ!
ああ……
見てろよ、お前が死んだ後も、オレは生きてるぞ!」
三眼にとって、自分が相手より長生きする=自分が相手に勝つ。


④瀕死で回復まで数万年かかるところを、白大の丹薬によって救われる→この借りは復讐の代行によって返す
三眼は白大によって命を救われたようなもの。借りを返すのは三眼にとって当然。そのために白大の家族の仇である村人を殺害する。ただ、村人が暴走したのはそもそも自分のせいだという認識が三眼にはない。村人の殺害方法も白大が頼んだものから勝手に変えてしまった。


⑤木を植えて生長を見守る→貸し借りの勘定の外
「一千年前俺が動けるようになった時に、すぐ植えたお前。」の一千年前は自害の傷から回復した時を指す可能性が高い。長期間ろくに動けないのが明白な状況なので、気を紛らわせるために苗木を植えたのかもしれない。平穏で静かに長生きを楽しみたい三眼にとって、木は理想の生き方を体現した存在。第6話の自己紹介でも苗木に言及している。

「唯一的娱乐或者说嗜好,只是看着一根小树苗一天天长高长粗,比一比谁能活得更久罢了。」

(直訳)
「唯一の娯楽というか道楽は、一本の小さな苗木が日に日に高くなり太くなるのを眺めて、どちらが長生きできるのか競ってみることだけだ。」
「比一比谁〜」で「誰が〜か競ってみる・比べてみる」。この「谁」は「一本の苗木と周りの木の中の誰」でなく「苗木と自分のどちら」だろう。死に際に感じた唯一の心残りは苗木より長生きできずに負けたということだけだった。一本の苗木に愛着を持っていたために黒山村付近から離れられず、白家の子孫を食べるという事故を起こしてしまう。苗木とは白家の比喩であるように感じられなくもない。だが具体的な独白内容とあまりに齟齬が多いのでおそらく違う。


⑥西暦1906年の1、2年前に元に回復し、村人や馬賊を食う→貸し借りなし
三眼にとって屍者が人間を食うことは天経地義なので、貸し借りなし。清末も南北朝時代のように山から出る人間を殺していた可能性が高い。


⑦安全と引き換えに生贄を提供できるという人間からの申し出を受ける→差し引きで貸し借りゼロ
殺人をしている屍者がいると気付いたいくつかの村の年寄りは、家族が巻き込まれないように取り引きを持ちかけた。黒山村の村長によれば村の数は3つで、この一年生きて逃げられた人間はいないという。隣村で1人が逃げようとして失敗し、一家全員が殺されたことは、白小小の父親も知っていた。三眼は食った人間の中に白家の子孫が混じっていたことに気付かなかった。逃亡者は監視していたが、人々の会話内容は把握していなかった。


⑧生贄の白小小を食べようとしたところを黄二果と高皓光に邪魔される→邪魔者を連行しなければ村人を皆殺しにすると白小小を脅す
三眼にとって食事の邪魔をした者を殺すことは当然。 この時白小小は白家の子孫が黒山村に根付いたことを揶揄する内容の童謡を歌っていた。しかし傀儡で食おうとした三眼は気付かなかった。三眼は借元真目をつけていない傀儡とは感覚を共有していないようだ。そのため千里眼で監視しているだけでは聴覚情報が得られなかったのだろう。


⑨高皓光たちを殺そうとするが、白小小にやめてと言われる→やめて親切アピール
三眼は高皓光と村長の口論を盗み聞きし、白小小が白家の子孫であることとその両親を食べてしまったことを知る。天意弄人と感じる。普通なら食事の邪魔をした人間は殺すところだが、白家の子孫に頼まれたのでやめる。もしくは邪魔者のおかげで白家の子孫を食べずに済んだので、返さなければならない借りが生じなかったのかもしれない。2人が助かったこと自体は良いことだが、恩人である白家の子孫に纏わる貸し借り勘定の特殊性は別の大きな問題を生む。


⑩恩人である白家の子孫を誤って食べてしまったことに気付く→白小小の復讐のために自害して借りを返す
近隣の村の人間と三眼は取り引きをしていた。しかし黒山村から差し出された生贄は恩人である白家の子孫だった。それを誤って食べてしまっていた。村人に対する借りより白家に対する借りのほうが上なので、白小小の復讐を優先した。あるいは白家の子孫を食べさせられたので、村人に対して返さなければならない借りが生じなかったということかもしれない。恩人である白家の子孫に纏わる貸し借り勘定の特殊性が、虐殺の引き金となった。
三眼の価値観からすると、恩人に借りを返すためには恩人自身の手で復讐を果たさせるのを手伝う必要があるらしい。そのために白小小に復讐の押し売りをした。借りを返すためなら死ねるというのは尋常でないが筋は通っている。ただ、そんな三眼も苗木との長生き競争に負けることは残念に感じた。
白小小は場の雰囲気に飲まれなければ殺すのは村長だけで済んだのかもしれない。そうすれば高皓光について行って三真法門に弟子入りしたのかもしれない。だが先祖の罪を口実にして現在の村の大人を皆殺しにしてしまったので、村の子どもたちに家族の仇として殺された。しかし先祖の罪を口実にすることの間違いに気付いたので、山の外に出られた。