メモ帳用ブログ

色々な雑記。

大陸から香港へ移り、武侠小説家になった金庸金庸武侠小説には復讐が縦軸の1つとなるものもあるが、痛快な作風が持ち味にも拘らず(だからこそ?)復讐の顛末はすっきりとしないものが少なくない。
碧血剣の主人公は無実の父を殺害した崇禎帝に対する復讐を誓う。だが結末は崇禎帝が史実通りの最期を遂げることを示唆するに留まる。主人公は明だけでなく清にも敵対的であり、国を売ってでも崇禎帝を追い詰めるわけでもない。
秘曲笑傲江湖には林平之という復讐者が登場する。林平之は鏢局の御曹司だったが陰謀により家人を皆殺しにされる。まるで主人公のように登場し、復讐の動機も納得しやすいものなので、序盤は感情移入の対象になる。はじめは正義の復讐を行おうとしていた林平之だったが、少しずつ清廉さは蝕まれていく。本当の主人公である令狐冲の華山派での立場に取って代わる。令狐冲と淡く思い合っていた岳霊珊の心も奪う。やがて林平之は転落へ突き進むことになる。