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色々な雑記。

ここではリベラル・コミュニタリアン論争時の議論と区別するため、2000年代以降、論争後に展開されているコミュニタリアニズムを応用した論考をポスト・コミュニタリアニズムと呼ぶ(1)。ポスト・コミュニタリアニズムで見られる議論には、おおむね次のような2つの流れがある。第一に、多文化主義との社会的結束(social cohesion)の関係を読み解く思想として、コミュニタリアニズムを応用する論考、第二に、コミュニタリアニズムを共和主義と読み替える論考で
ある。
ポスト・コミュニタリアニズムの展開─「リベラル・コミュニタリアン論争」以後の位相─

日本だとコミュニティ・共同体と聞くとムラ社会を連想するせいか、コミュニタリアニズムを右翼・保守主義と勘違いしている人が少なくない。だが実際は左派思想だ。自文化中心主義・エスノセントリズムでもない。アイデンティティの多層性も当初から意識されている。中道左派のリベラルでも自由至上主義リバタリアニズムでもない第三の道と言えなくもないが、ブレア首相のいう第三の道とも違う。


アラスデア・マッキンタイアコミュニタリアニズムを作り上げた哲学者の一人だ。

そのうえで筆者は、マッキンタイアの「知的探究の伝統」論が、文化的文脈重視型アプローチの人権論を根底で支える基礎理論となり得ることに注目する。つまり、文化的伝統の変化・発展について文化的文脈重視型アプローチの人権論が主張する、文化的伝統の内側における議論と文化的伝統の外側から投げ掛けられる批判を踏まえた文化横断的な対話との両者を通じた文化的伝統の変化や、ある文化的伝統における過去との一体性を維持しつつも、同時に、現代的関心に対応してその伝統に内在する問題点や矛盾を突破しあるいは超越してその伝統を再構成する過程の意味するところについて、極めて明快かつ詳細な内容を提示するのがマッキンタイアの「知的探究の伝統」論であり、その核となるのが、競争し対抗している両立不可能な二つの伝統が相互に対決している場合の対応として「伝統構成的探究」に基づく解決法を提示する彼の伝統間比較論だ、というわけである。したがって、文化的文脈重視型アプローチの人権論が採用する議論の進め方に基づいて文化的伝統の変化・発展を論じる場合、その具体的な進め方を詳細かつ明確に提示するマッキンタイアの伝統間比較論が大いに参考となることが明らかにされた。
ハイエクの伝統論の再構成―日本文化のなかでの自由社会の擁護―

日本の伝統文化の特徴とされているものを、マッキンタイアのいう「小さな共同体」の「厚い伝統」の特徴と解釈すると、日本文化に適合的な自由社会擁護論の探求は困難ということになる。しかしハイエクのいう異質性・多様性を前提とする「大きな共同体」の「薄い伝統」、つまり「行為ルール」の特徴と解釈すると、別の結論を導き出せる可能性がある。著者は、日本という国家あるいは政府は消極的自由には取り組むべきだが積極的自由には取り組むべきでないと結論付けた。