メモ帳用ブログ

色々な雑記。

事実・データの解釈を巡る議論が巻き起こるのは健全だが、捏造の発覚した事実・データを擁護し続けるのは不健全だ。
トランプ前大統領の顧問であるコンウェイ氏は写真の捏造を指摘された際に「もう一つの事実(オルタナティブ・ファクト)だった」と答えて批判を受けた。トランプ大統領陣営のこうした態度はジョージ・オーウェルの作品、特に『1984』で非難された全体主義政権との類似を盛んに指摘されている。
ジョージ・オーウェルの作品で糾弾される体制の主なモデルは共産主義国だ。そのためオーウェルはあらゆる社会主義体制の批判者だと誤解されることがある。しかしオーウェルはあくまで民主社会主義者であり、批判しているのは共産主義においてしばしば目的とすり替わる独裁という手段、そして全体主義だ。オーウェルの作品を読んで社会主義批判だと解釈したくなる者が出るのはやむを得ないにしても、実のある議論のためにはこの事実を踏まえる必要がある。
また、『動物農場』で野心あふれるナポレオンのほうが善良だが愚鈍なその他の動物よりも好きだという感想を持つ者が出ること自体は当然だろう。フィクションだと善玉や一般人よりも悪玉のほうが魅力的に感じられる人間は少なくない。確実に捻くれすぎた少数派の意見だが、自分は司馬遼太郎先生の『関ヶ原』で石田三成よりも徳川家康の方に好感を持った。ただしこれは作者の意図した読み方ではないし、作者の意図ではないことが自然に感じ取れる程度の読解力はないと作品についての議論は成立しない。
意図的に悪役を魅力的に描いている作品はまた別の話だ。