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ゴールデンカムイで有名な宗教美術パロディはいくつかあって、その中の1つにブグローの『天使の歌』のパロディがある。第107話『眠り』で稲妻夫婦の遺児を鶴見がだっこし、月島、鯉登、二階堂が見守っているコマだ。


《天使の歌》ウィリアム・アドルフ・ブグロー|MUSEY[ミュージー]

『天使の歌』のモチーフは幼子イエスを抱くマリアとそれを見守る3人の天使だ。ミケランジェロの『ピエタ』と同じく鶴見に聖母子が重ねられている。
この段階では鶴見の過去はまだ明かされていない。だが子守りに慣れた様子や、聖母子のモチーフにより、鶴見が人の親であることが示唆されている。
鶴見が稲妻夫婦の遺児に抱いた情と、鯉登、宇佐美、尾形、二階堂、その他年若い部下たちに感じていた情は似たようなものだったのではないか。
殺す必要があって両親を殺したことには悪びれないが、赤ん坊は殺す必要がなくて助けてやれそうならちょっとした手間をかけても助けてやりたい。
でももし必要があれば赤ん坊ごと殺すことに容赦はしない。
鶴見はこの後で谷垣が離反しようとした際、もし逃げればインカラマッを殺害すると示唆して脅しつけていた。インカラマッは妊娠しており、臨月とはいえ十分な備えのない状態で母体を殺害すれば胎内の赤ん坊も死亡することは避けられない状態だった。谷垣はフチたちを裏切れずにインカラマッとともに逃げようとするが、すぐに月島に発見されてしまう。逃亡を手助けした家永まで射殺され(家永は女装した男性だが月島は女でも容赦なく殺すという危機感をもたせるのに効果的な演出)、谷垣とインカラマッは命懸けの逃避行を余儀なくされる。この際、以前は女性のお銀だろうと躊躇いなく切り捨てていた鯉登は2人の逃亡を許した。さらに月島か2人を追い詰めた際は逃してやるように言った。月島は「脅しは実行しなければ意味がない」と言い、2人だけでなく鯉登にも銃口を向けるが、最終的に説得される。もし鯉登が変わっていなれば2人は月島か鯉登のどちらかに確実に始末されていただろう。当然お腹の赤ん坊も亡くなるところだった。鶴見は鯉登の変化を知らないので、逃亡の際には赤ん坊を含めた3人がきちんと始末されることを当然期待していたはずだ。