メモ帳用ブログ

色々な雑記。

鯉登平二を考える上で重要な部分なので再確認。

日露戦争後に第七師団が中央から受けた仕打ちに関する谷垣の証言(第31話)

  • 中央が早期攻略を急かしたにもかかわらず、多数の犠牲者が出たことで作戦の参謀長でもあった元第七師団長の花沢中将が揶揄され、帰国後自責の念から自刃した。
  • 政府は花沢中将の自刃の理由を部下たちの落ち度とした。
  • 第七師団は勲章や報奨金をもらうどころか冷遇された。

 

■第58話で鶴見は尾形が自分の元から逃げた理由を推測するフリをしながら、花沢中将が自刃したのは政府に追い込まれたからだという嘘を二階堂に吹き込んでいる。

 

■第103話では花沢中将が尾形と鶴見により暗殺されたという事実が明かされる。

  • 暗殺直後の鶴見は尾形に「中央は第七師団に自刃の責任をかぶせるだろう (中略) 外敵を作った第七師団はより結束が強くなる」と語っている。当初の谷垣や他の鶴見一派の兵士を見る限り、この目論見は成功している。これに続く、第七師団は尾形を担ぎ上げる、という部分はただの甘い嘘だ。実は鶴見には満鉄計画に反対する花沢の排除という真の目的まであった。
  • 鶴見は鯉登音之進にも「花沢中将の自刃は 二〇三高地の甚大な被害を中央がすべて花沢中将になすりつけたのが原因だ…」と嘘を吹き込もうとしている。
  • 音之進は「私の父ですら花沢中将の自刃を第七師団の責任とした『中央』へ強い不信を持っている」と月島の口を借りて証言。

 

花沢自刃が中央のせいだというのは鶴見が部下たちの結束を高めるために広めようとしている嘘だ。平二が親友の自刃の原因が中央にあると考えている描写は存在しない。花沢が自刃したのは中央のせいというよりも、将兵の犠牲者を出したことに対する自発的な自責の念のためだろうと、おそらく平二は推測している。だからその点について中央を責めるつもりはない。だが中央が花沢自刃の責任を第七師団の部下たちに押し付けて冷遇した点には強い不信を持っている。この点は鶴見の計算ではあるが工作ではない。そのため、上に立つ者としての中央のあり方に平二が憤りを感じたことはただ騙されただけとは言いがたい。

音之進もこうした平二の姿勢を知っており、後にはきちんと理解できるようになった上で、鶴見の行く道の途中でみんなが救われるのなら、「私や父が利用されていたとしてもそれは構わない」とアシㇼパの故郷で言った。音之進は鶴見が多数の部下たちを見捨てられる指揮官だと最後の最後でさえも気付いていなかったので、敗色濃厚になった五稜郭で「私たち親子がここまで来たのは 自分たちの選択ですからどうなっても受け入れます」と言いつつ、鶴見と部下の行く末について話し合おうとした。だが鶴見は甘い嘘でごまかすばかりだった。

「私のちからになって助けてくれ」と
まっすぐにアタイを見てそげん言ってくいやっちょったら
そいでもついて行ったとに

とは2人で協力して部下たちを守りたかったという意味だろう。

「立派な陸軍将校」として憧れて愛した鶴見に指揮官としての誠実さがあることを鯉登はギリギリまで信じようとした。この時点でも鶴見に対する愛を持っていたし、この後も鶴見に対する愛は水面下に押しとどめているだけで消えていない。だが初恋めいた憧れではあっても狭義の恋愛や性愛ではないので、月島との間にこれと同等、またはそれ以上の愛情を同時に育んだ。こちらも狭義の恋愛や性愛ではない。