メモ帳用ブログ

色々な雑記。

土方、ウイルク、鶴見はそれぞれの陣営のトップだけあって意図的に重ねられている描写が多い(ソフィアや鯉登平二もだが話をわかりやすくするためにここでは省く)。
この3人は死亡したと思われていたが実は生きており暗躍したという共通点がある。それだけでなく、部下を死なせないために袂を分かったという共通点もある。
この中で文句なくそれが上手くできたのは土方だ。永倉は「アンタ達(土方と近藤)」の演技のおかげで離別して死地に行かずにすんだ。門倉は後年その思いやりに気付いて、実は生きてきた土方と関係を回復させ、ともに戦った。
ウイルクはこの中で自分にとって一番不利益となる選択をしてしまった。ウイルクは非情だが仲間に嘘のつけない性格だ。だから自分が志を達成する手段を変えた時、ユルバルスと道を違えることになろうともその点をごまかすことができなかった。今は金塊を手に入れるために北海道アイヌを利用しているだけど嘘をつけばユルバルスはついてきてくれただろうに、それができなかった。そしてウイルクは、敵対する未来がわかっていながらもユルバルスを殺すことができなかった。ユルバルスはウイルクを殺害する決意を固める。ウイルクが自分を裏切ったからではない。ウイルクからかつて自分が愛して憧れた合理性が薄れてしまったからだ。ウイルクはかつて自らが憧れていたオオカミのやり方でユルバルスに殺される。
この中で一番判断が遅かったのが鶴見だ。鶴見は死地である函館に部下を連れてきて大半が殺されてしまった。特に目をかけた4人も、宇佐美がこれ以前に死んでおり、鯉登は部下たちのために同行は続けたが道は違えてしまい、月島は重症を負いながらも鶴見の声に応えて同行しようとしたところを鯉登に引き止められ、尾形は戻ってきたが亡くなってしまった。生き残った者も戦闘不能者ばかりだ。鶴見は本当の手遅れの一歩前まで自分の過ちに気が付けなかった。あくまで最優先は国家繁栄なので部下の敗戦処理を手伝ってやる気もない。それでも「道連れには出来ん」と鶴見が思い直したために命を拾えた部下がいたのだから、全くの無駄ではない。