メモ帳用ブログ

色々な雑記。

実はいご草ちゃんの偽物の骨を埋めさせたのは自分で、ちゃんと生きている、という鶴見の言葉を月島は素直に信じたのだと自分は感じた。それに月島は、亡くなった戦友のために、という鶴見の言葉は疑いもしなかったことが鶴見とアシㇼパの会話を盗み聞きした際に明らかになっている。自分にはこちらが意外だった。月島は鶴見の言葉ならよほどのことがない限り信じる。鶴見の姿勢に疑問を抱くのとはまた別の話だ。
それでもいごちゃんの生死を誤解する読者が多かったから、第276話という終盤にもなってわざわざ生きていることを明かしたのだろう。確かにここが理解できているかどうかでクライマックスの印象は全く違うものになる。
月島は鶴見から死刑回避の工作を明かされた際、わざわざ自分から「じゃあ彼女は…」と安否を確認している。信じられないなら自分から聞いたりしない。月島がいごちゃんの生存を聞いて暗い顔をしたのは、真相も確かめずに暴力に訴えるという父親にやった行為を鶴見にもやってしまったことに絶望したからだ。月島は仲間の軍人に止められなければ鶴見を殴り続けていたはずだ。鶴見の裏工作がなければ死刑回避できなかったと知ったという点も含め、月島は自分が死刑にふさわしい人間だと改めて感じてしまった。月島はいご草ちゃんのためだとカッとなりがちな点をいご草ちゃん自身によって諌められている。そのことを砲弾で吹き飛ばされる際に思い出した。それなのに真相も確かめずに父親を殴り殺したせいでいご草ちゃんを略奪愛する選択肢を自ら失い、そしてまた同じように鶴見を殴ってしまった。
アシㇼパの故郷で月島は思わずインカラマッにいご草ちゃんのことを教えてほしくなった。それは鯉登の「まだ遅くないッ」「その厳格さは捨てたものの大きさゆえか? 月島…!!」という言葉を聞いていご草ちゃんのことを思い出し、やり直したいという思いが頭をよぎったからだ。だがインカラマッが産気づいて話は中断され、出産後改めて占いの結果を言おうとした際は月島から断った。月島は死刑囚時代も、自分にはもう何もしてあげられないからと、いご草ちゃんと接触することを諦めている。さらにあれから10年以上が過ぎた。子供も生まれているはずだ。いご草ちゃんと自分がやり直すには遅すぎた。月島は知らないがいご草ちゃんは夫と幸せに暮らしているという現実もある。しかし月島の人生そのものはまだ手遅れにはなっていなかった。そのことは鯉登が証明した。