メモ帳用ブログ

色々な雑記。

鯉登が五稜郭攻囲戦で身を以て思い知ったのは、戦とは味方も眼の前で当たり前のように死に続ける場だということだろう。網走監獄襲撃も相当に血腥い事件だったが、完全武装の軍人対少数の武装した看守と丸腰の囚人という戦いだったため、第七師団の犠牲者はほとんど出ていないようだった。だが五稜郭攻囲戦はまさに殺し合いだった。鯉登を庇った部下は眼の前で蜂の巣になって死んでいった。鯉登はその亡骸を盾にして被弾を逃れた。自分たちを援護するための艦砲射撃でさえ僅かな手違いでこちらに当たりかねない。当たれば木っ端の如く肉片になる。鶴見の「怯むなッ 父の愛があれば息子に砲弾は落ちん!!」という言葉を聞かされた時の鯉登の表情は単行本版で怪訝なものに変更されており、後の展開との繋がりがスムーズになっている。ただ、変更前の嬉しげな表情もあれはあれでテンションの乱高下する戦の激情が表れていて好きだった。