メモ帳用ブログ

色々な雑記。

第210話『甘い嘘』を読むたびに反応に困るのが、月島が鯉登に知るはずもない佐渡訛りの男についてベラベラ喋りだすシーンだ。佐渡訛りの男なんて第七師団の人間だと仕込まれた月島と仕込んだ鶴見しかしらないぞ。そもそもアシㇼパの故郷での鯉登と月島の会話を見る限りだと鯉登は月島の過去をよく知らなそうだ。

奉天で月島が鶴見を殴り、周りの兵士に止められながら口論している部分のセリフだけを見ても、月島の父親があの子を殺し、その後いろいろあって月島が死刑を受け入れていたところを鶴見に救われたらしい、ということは鶴見の小隊中に知られるところとなったと考えた方がいいだろう。鶴見がこの時に大文字の太文字で言った「そして私の戦友だから…」というセリフは小隊中の語り草になった。ただセンシティブな内容だけに新参者の少尉である鯉登の耳には入らなかったようだ。月島は他の兵士から信頼されていたようだし、死刑囚になった過去があるらしいとは言っても同情できる経緯のようだし、興味本位で詮索したり言いふらしたりする者はいなかったはずだ。また連載開始時点だと、鯉登と月島は鶴見直属の小隊とは別の小隊に配属されていたと考えた方が辻褄が合う。

大泊で月島は鯉登を恨みがましく暴力的な態度で脅しつけた。これが鯉登を押しとどめるための意識的なふるまいだったのは間違いない。翌日、杉元に刺された鯉登に月島は「いつも感情的になって突っ走るなと注意していたでしょう…」と語りかけつつ、「昨日は素直に聞いてくれたのに…」と考えていた。「あなたたちは救われたじゃないですか」と語った際に月島がぶちまけた精神的な苦痛や鯉登親子を羨む気持ちは演技ではないが、あえて自制心を緩めることでそのとげとげしさを利用しようとした。

ただ知るはずもないことを鯉登にまくし立ててしまった点については自覚があったのかどうか。以前はそれもあえて意識的にやったと考えていたけど、今はこの点は本気で口が滑ってしまったのかもしれないと考えている。そのくらい月島は精神的に追い詰められていた。