メモ帳用ブログ

色々な雑記。

ファンブックの質問箱で野田先生は、もし白石が裏切ったら杉元はどうするのか、という質問にこう答えている。

杉元を殺そうとするか、あるいは死んでも構わないと理解しての裏切り行為なら先に殺しますよ。

殺意あっての裏切り行為は敵対行為に等しい。敵だろうと裏切り者だろうと利害が一致すればグチグチせずに手を組むのがゴールデンカムイという作品で、後ろ向きな理由で人を殺したりしないのが杉元という男だ。殺されるくらいなら先に殺すが、怨恨だけで相手を殺したりはしない。それでも、マイナスになった信頼を取り戻すのはゼロから築き上げるよりも難しい。
終盤えらく軽いノリで房太郎が裏切ったり許されたりしてたのは、メタ的にはすぐに白石を庇って死ぬ予定で後々の信頼関係とか気にしてなくて良かったからなんだろうな。アシㇼパに語った内容からして、アシㇼパも杉元も殺すつもりはなかったのは、読者視点からだとわかるし。
網走編はインカラマッも、門倉も、土方たちも、キロランケと尾形も杉元を裏切っていたという裏切りのオンパレードだった。ただし全員がこの時点ではアシㇼパの安全を確保しようとしていた。そして門倉を含む土方勢力とインカラマッはこれ以後杉元たちの障害とならず、むしろ同じ陣営になったために、その後の追及を受けなかった。杉元は土方勢力とは直接手を組んだ。インカラマッとは一時同じく鶴見の傘下に加わり、杉元たちが鶴見から離反して間もなく谷垣とインカラマッも鶴見から離反した。
杉元・尾形間は尾形による裏切り行為(杉元をヘッドショット、アシㇼパを誘拐)で完全に敵判定。その後もアシㇼパに危害を加えることが目的化しているので和解は不可能だ。
キロランケは後に明らかになる極東連邦樹立という目的自体が杉元やアシㇼパと対立していたわけではない。だが尾形と組んでアシㇼパを誘拐したので杉元としては庇う理由はなかった。だからキロランケは樺太先遣隊4人のうち、キロランケとは目的が絶対に相容れない鶴見の信奉者である鯉登と月島、アシㇼパをフチと再会させるために志願しキロランケに対する因縁もあった谷垣、という3人に殺害される。アシㇼパも自分の父親殺害の主犯がキロランケだと知ったら流石に生きたまま仲良くやって行くことはできなかっただろう。
谷垣は陣営フラフラ気味だけど、鶴見勢力に直接危害を加える行為はしていない。敵だった杉元たちとは和解してから危害を加えたことはない。ただ、利用価値のない裏切り者に厳しい鶴見勢力としては、対杉元・アシㇼパで利用できなくなればアウト判定になる。
樺太編の最後でアシㇼパ・杉元が鶴見勢力から離反した際、アシㇼパは広範囲に矢を放ったが、毒をわざわざ取り除いており、殺意はなかった。そんな杉元たちを鶴見勢力は銃撃して杉元に大怪我を負わせた。だから、先に一線を越えたのは鶴見勢力ということなんだろう。作品内の基準としては、手負いの杉元を説得しながらノコノコ近づいて刺された鯉登のほうが悪い。「いつも感情的になって突っ走るなと注意していたでしょう…」と月島からもお叱りを受けた。樺太編の冒頭でノコノコとクズリに近づいて怪我をした時と同じくらい間抜けだ。シネマトグラフの話で毛が寝ていない=トドメが刺されていないクズリに近づいてはいけないという前フリもある。手負いで怒り毛の立った猛獣である杉元に不用意に近づいた鯉登のほうが甘ちゃんの馬鹿だ。同じ手負いの猛獣でもキロランケとアシㇼパくらい信頼関係があったらまた違ったんだろうけど。