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もし第七師団の面々が日本繁栄のために死ねれば満足できるならそもそも日露戦争後の冷遇にも文句は言わんわい。第七師団の奮戦もあって日本は日露戦争に勝利できたんだから。国に尽くして血を流したのにそれに見合う報いが無かったから、鶴見の部下のほとんどは鶴見勢力に加わった。鶴見もそれをわかっていたから月島と鯉登以外の前ではたとえ劇場でも日本繁栄が本当の目的だなんて言えなかった。
そして鶴見の本当の目的が第七師団の待遇向上なんかにはないと最初から知っていた月島は、ずっと戦友を裏切り続けていた。だから満州が日本領になれば亡くなった戦友には報いれることを心の支えにして後ろめたさから目を背けた。本当は月島は「よくも戦友を殺せたものだな　尾形よ‼︎」と尾形を非難するくらいに戦友との連帯を大切にしたい男なのに。今生きている戦友が望んでいるものは、立派なお題目やとんでもない何かなんかじゃなくて、自分や仲間や家族が豊かで暖かい生活を送れるようになることだと知っているのに。
月島は戦友や同胞という言葉が心に響く。佐渡ヶ島では恋人はいても友達はいなかったから。島の外に出てはじめて築けた仲間との連帯が軍での戦友という絆だったから。
月島が本当に望んでいたものは戦友との絆だった。だが鶴見は自分との絆のために他の戦友を裏切らせた。しかもその絆をわざと嘘で試していたことを月島は知ってしまった。信頼は偽りだと思い知った。だから月島は鶴見が何かとんでもないことを成し遂げてくれると信じ込み、それに縋るしかなくなった。
ところで尾形を「本部の飼い猫め」ってなじったセリフ、この時点だと野田先生の意図としてはたぶん本部は中央じゃなくて第七師団本部のつもりで書いているよな。ちょっと展開の予定を変更したっぽい。