メモ帳用ブログ

色々な雑記。

鯉登が尾形への殺意に溢れているのは、ボンボンって陰口を言っていたから(アニメの薩摩弁のセリフは野田先生が提出)とか、鶴見と親密だったからとかが主な理由ではないだろう。ある程度はあるだろうが、あくまで殺したい相手をさらに嫌う理由、程度のものだ。
ボンボンは普通だったらそこまで気にする陰口でもないし、尾形から言われてることを知っているなら宇佐美にも言われてることは知っているはずだ。また、鶴見と一番親密な部下はどう考えても月島だ。
鯉登が尾形に容赦ないのは、かつて自分たちだった人間が自分たちを裏切り、自分たちを殺し、今も自分たちに害を与えようとしているから、だろう。もし尾形が裏切らなければ、鯉登は宇佐美に対するものと同程度くらいには尾形に対しても仲間意識を持っていたはずだ。
尾形の両親のことも鯉登自身は善かれ悪しかれ大して意識しているようには見えない。月島と自分の関係に月島の背景は関係ないと思っているくらいには、尾形と自分の関係に尾形の背景は関係ないと思っているだろう。
同胞意識が強い人間の例に漏れず、鯉登は敵対者に厳しい人間だ。同じく同胞への思いが強い月島も、尾形が戦友を殺した時には、本部の飼い猫と罵った。ただ、このセリフは中央や第七師団の本体の反乱分子であり、和田大尉を射殺した月島が言ってもいいのかという気は若干するが。戦友を思いながらも戦友を欺くことに加担する葛藤を抱えるのが月島というキャラには重要だから、この部分もその複雑さに還元できる部分ではある。そう考えると、日露戦争後に鶴見を追って陸軍の第七師団に入隊した鯉登は、同胞の境界に悩む必要のない恵まれた立場ではあった。同胞のために身命をとして戦うことになんの疑問も抱かずにいられた。最後の最後に部下たちか鶴見かの選択を迫られるまでは。