メモ帳用ブログ

色々な雑記。

不正に出獄した死刑囚である月島がいご草ちゃんの髪を捨てなくてはいけないと思い詰めたのはいご草ちゃんが生きた人間だからで、死神の二つ名がある鶴見が長い間妻子の骨を手元に置いておけたのはそれが死者の物だったからだと自分は考えている。
鶴見が列車の中で妻子の骨、もしくは部下の死体に語りかけていたのは鶴見が死の側の存在であることの強調かなと。鶴見は月島も自分のために死なせることで比喩的に自分の手元に置いておくつもりだったんだと思う。そうしたあり方が鶴見にとっての同行者でありともに死に属する者である道連れなんだろう。こうした心情は「鶴見中尉殿に救われた命ですから 残りはあなたのために使うつもりです そして死んでいった者たちのためにも」と語った月島とも共通している。
一方、「『私のちからになって助けてくれ』と まっすぐにアタイを見てそげん言ってくいやっちょったら そいでもついて行ったとに」と言った鯉登は、本当は鶴見の首だけを中央に差し出したりせずに鶴見や部下たちとともに生き延びる道を模索したかった。地獄の中でも鶴見とともに生きようとしたかった。鯉登は鶴見を失った金塊争奪戦終了後も、部下とともに生きていこうとし、「月島基軍曹 私のちからになって助けてくれ」と語りかけている。鶴見とともに生きたかった鯉登のあり方に、自分を死者の側の存在と見なして死者の側の存在である鶴見について行こうとしていた月島は胸を打たれたのだろう。一瞬硬直し、自分の名を呼ぶ鯉登を無意識に目で追った。だが鶴見から「私の味方はもうお前だけになってしまったな?」と言われて死者の側に留まった。
鯉登は列車の中で鶴見に月島を解放するように頼んだ。それは単に月島を鶴見の支配から解放するだけでなく、月島を死の呪縛から解放することにもなった。そして列車で死の呪縛から解放されたのは月島だけではなかった。鶴見は杉元やアシㇼパとの最後の戦いを前にし、とうとう自分が部下たちを道連れにすることの過ちに気付いた。さらに戦いの中で妻子の骨まで失ってしまったが、それによって自分が本当に妻子を失ったことを、妻子は死に自分は生きているという現実を受け入れられるようになったのだと思う。だから鶴見は海中に沈んだ列車から生還でき、長生きして日本を守るという初志を貫徹できた。