メモ帳用ブログ

色々な雑記。

映画鑑賞前は古臭いロン毛イケメン(自分の世代だとキムタク全盛期を思い出す)に見えた草太が、鑑賞後は清廉な内面をそのまま写し取った浮世離れした美青年に見えるようになるんだから、人間というかアニメ・漫画のキャラはやっぱり中身が大事だ。髪が長いのは祖父も同じで、閉じ師的には霊力とかの関係で長いほうがいいのかもしれないし。あと鑑賞一回目だと草太の優しくて年齢以上に大人なところが目立っていたけど、二回目以降だと相当な天然なことがよくわかる。
鈴芽は一目で草太の外見に惹きつけられた。ただ草太を追いかけたのは


一目惚れではなく草太に懐かしさを感じたからだ。一回目に見た時は、最初、一目惚れで話を動かすのは強引だなと感じたけど、「私、あなたとどこかで会ったことがあるような気が……。ってこれじゃナンパか? はぁ。帰ろ」と草太を探しながら鈴芽が言ったから、2人にまだ明かされていない出会いがあったためにそうしているのだとわかった。「あなたとどこかで会ったことがあるような気が……」がナンパの口実ではないことはニュアンスや口調で伝わった。これはテレビや各配信サイトで公開された冒頭12分で把握できる。
より詳しい心情は小説版で確認できる。鈴芽は草太の美しい景色のような佇まいに心動かされていた。そうした景色にも草太にも見覚えがあったからだ。
すずめの戸締まりは、「行ってきます」と言われたきり母と死別してしまった鈴芽が、草太に「おかえり」と言えるようになり、自らも新たな出発へ踏み出すまでの話だ。戸締まりには終わりと出発の両方の意味が込められている。鈴芽が草太を失うことを強く恐れたのは自分が母を失った辛さをもう二度と味わいたくないと思ったからだ。草太は男性だが優しく柔らかい母親ようでさえあった。だが草太以上に母親代わりである環と向き合ったことで鈴芽は次の成長段階へ進んだ。旅の中で芽生えつつあった草太への恋心も自然に自らの血肉の一部とできるようになった。草太は第一印象を超えて素晴らしい青年で、ともに後ろ戸を締めるために奮戦する中で徐々に戦友としての絆が強まり、やがて無自覚のうちに恋をするまでになっていた。
鈴芽が眠る草太に旅館でキスをしようとした時や、スナックで草太に座った時(双子の次に座ろうとした時は、単に重いからだけでなく草太には男としての自覚があるため断られていたが、鈴芽は目の前の草太が椅子なのでそうした実感がない)、スナックで草太に目覚めのキスをした時の鈴芽は草太に恋をしつつあったがまだ無自覚だった。だから無邪気にそんなことができた。病院で草太の祖父に「草太さんのいない世界が、私は怖いです!」と言った際も、まだ母を失った悲しみを繰り返したくないという思いと無自覚の恋心がないまぜになっていた。
鈴芽が自分の恋心を自覚できるようなったのは環に「要するに、あんた、好きな人のところに行きたいっちゃろ?」と言われて、思わず「恋愛とかじゃないしっ!」と否定した後だ。この時の鈴芽は本人に自覚がある恋心を言い当てられて驚いたのではなく、本人も気付いていなかった恋心を突然意識させられてしまい、混乱したのだ。この点も、セリフは多少異なるが、小説版で確認できる。だが鈴芽は草太を救うために常世へ赴く際は、「好きな人のところ!」へ行くのだと環に朗らかに告げられた。自分の恋心を自然に引き受けられるようになった。常世で鈴芽は恋する少女として草太に口づけをした。