メモ帳用ブログ

色々な雑記。

要石は呪術的な存在であるため、感覚的にはおかしくないが物理的な縛りを飛び越えた挙動を多々している。この物理的にはありえないのに感覚としては納得できるという人間の認識のあり方こそが神話やファンタジーの本質とも言える。


まず後ろ戸は自然の神々から拝領した土地を人間が利用しなくなり廃れたままにしてしまうことで出現する。後ろ戸からは災害や疫病が出てくる。閉じ師は場所を悼んで土地を神々に返すことで後ろ戸を閉じる。後ろ戸を閉じるだけでは抑えきれない巨大な災害は二本の要石で封じる。要石を必要とする場所は時代によって変わる。要石は人々に忘れられた場所で数十年、数百年をかけて土地を癒やす。
鈴芽は自分の地元で後ろ戸と要石を見つけた。どちらも廃墟となったホテルの中に鎮座していた。最近出現しただろう扉はともかく、要石が百年単位で誰にも脅かされずにその場所に物理的に存在したとは考えにくい。ホテルの工事中も利用中も放置されてからも誰にも何にも物理的に動かされなかったということはありえない。だから要石は物理的にあの場所にずっと存在したというよりは、概念的に九州のあの辺りに存在することになっていたものが、必要とされる場所が移り変わったことで人の手で移動させられるために後ろ戸のすぐそばのあの場所に実体化したと考えるほうが筋が通る。
おそらくサダイジンも人の手で刺し直されるために土地との霊的な結合が弱まっていたことで、ミミズが動き出した影響で抜けてしまったのだろう。実体化自体はずっと以前からしていたようなセリフがある。
鈴芽が東京上空でミミズに要石となった草太を刺した後、その要石は東京の上空から地上に落下したのではなく、東京の地上に刺さったのでもなく、常世の地に刺さっていた。常世は全ての時間と場所が同時に存在する空間だ。概念的にはあれで常世から東京の土地に刺さっていることになっているのだろう。
さらにクライマックスで鈴芽は東北の故郷から常世に入り、要石となった草太を解放し、草太がサダイジンを、鈴芽がダイジンを要石としてミミズに刺す。これにより、まさに人々に忘れられた土地になった東北のあの地に要石が刺さったことは間違いない。ただ要石が二本とも東北に刺さったことになったのか、東北と東京に刺さったことになったのか、東北とそれ以外の土地に刺さったことになったのかははっきりしない。この点はストーリーとして特に気にするポイントでもないだろう。重要なのは、要石で災害を封じるためにはある程度の年月ごとに人の手で刺し、人間が神々にお願いをする必要があるという点だ。