メモ帳用ブログ

色々な雑記。

閉じ師界隈は


すごく人員が限られた閉鎖的なコミュニティなんだろうし、昔はともかく今は社会的な評価もそうなさそうだ。そんな中で草太は、魔法使いの鈴芽は秘密ばかりだけど何か大事なことをしているような気がするという千果の言葉を鈴芽がそのまま自分に当てはめてくれたことにひどく嬉しくなったはずだ。鈴芽は幼い頃に常世に迷い込んだことでミミズなどが見えるようになってはいるけど、閉じ師の血も知識も持っていない外部の人間だ。外部の人間が自分を理解し評価してくれたということは、草太の世界に広がりと救いを与えてくれた。
鈴芽にとって草太は戦友であり、草太にとって鈴芽は戦友だ。ただ、生と死の境界を絶対的なものと信じられず死ぬのは怖くないという自分の価値観を初めて打ち明けられ、意味を与えてくれ、初めて身内になってくれた草太に対する鈴芽の感情と、今まである程度の身内は持っていたがそこに満たされないものを感じていたところ、外部から新しい風を吹き込んでくれた鈴芽に対する草太の感情は、その意味合いが若干異なる。
この晩草太は教員採用二次試験を明日に控えていた。もう自分が試験を受けられないことは明白だった。草太は鈴芽のせいだとは考えずあくまで自分の至らなさのせいだと思っていただろう。両立したかった教師と閉じ師という夢の、片一方がもう片一方を食いつぶそうとしている。流石に草太も閉じ師の仕事に嫌気が差しかけていたかもしれない。しかし外部から戦友となってくれた鈴芽が閉じ師の仕事を、目に見えないところで人々の生活を守る仕事を大事だと言ってくれた。それは草太の胸の内の痛みを慰めてくれたはずだ。閉じ師をしながら自分が感じてきたものは決して苦痛ばかりではない。だからこそ草太は今年は駄目だったとしても教師の夢を諦めず、次の機会を目指そうと思えたはずだ。閉じ師も教師も、大事な自分の夢は必ず自分の手で掴みたい。そう思わせてくれた鈴芽に出会えてよかった、鈴芽との出会いで自分の身に降りかかる不幸など一切生じさせない、と。