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色々な雑記。

もし草太が


閉じ師だけで食っていけます、直線的に先祖代々全員閉じ師です、祖父に育てられた理由は閉じ師である両親が忙しいor死亡したためです、祖父にはなんの不満もありません、な感じだったら見たまんまの素直で影のないキャラだと捉えていいと思う。
だが実際は、閉じ師だけじゃ食っていけないから別の仕事もやる必要があるし、父親は只人として生まれ閉じ師ではなく、閉じ師の才能が隔世遺伝した草太は父親から引き離されたのだし、草太が教師になりたい理由には父親に対する憧れと教育者としての祖父に対する反抗心がある。草太が現在閉じ師をやっている経緯には複雑さと屈折があり、草太はそれらを背負っている。
そうした草太のあり方を芹澤の視点から掘り下げたのが『つかのまの水面 〜芹澤のものがたり〜』だ。普段は水の底のような草太の瞳だが、つかのまに揺れる水面のように寂しさがよぎる瞬間はある。あるいは、常は水の底にいるような草太にとって、芹澤はつかのまの光を見せてくれる水面だったのかもだったのかもしれない。
この国はかつて科学を受け入れ、やがて閉じ師のことを忘れていったのだという。現代に生きる只人で閉じ師のことを知る者はごくわずかだ。ほとんどの人間には、超常の世界など見えず、感じられず、信じられない。それでも閉じ師は目には見えない大事なことを今日も行う。只人の世界のために閉じ師は戦う。
だから何も知らない芹澤が自分とごく普通の友人でいてくれたら、閉じ師だって人間の世界からはぐれたりしないのだと、きっと草太は信じられたのだ。そうやって芹澤と自分を守った。だがそうした世界観は不意に終わる。