メモ帳用ブログ

色々な雑記。

あだち充作品は基本的に女房の期待に旦那が応えて活躍するオーソドックスな構造で、実は相当ヘンなあだち充作品の一般受けを支えてるのはその部分。インタビューを読む限りだと元々は地味な主人公を描くのが好きだったらしいけど、ここは努めてエンタメに振ってくれている。ただし旦那に献身する女房的な役割は仲間の男がやることが多くて、ヒロインはむしろ主人公に目指す目標を与えて引っ張ったり自分も主人公とは別の目標に邁進してたりする。

わかりやすいのがタッチで、浅倉南は幼い頃何も考えずに和也に甲子園に連れてってと言ってしまって、そこで生まれた夢は達也が引き継ぐんだけど、それを叶えようという3年生で南は柏葉に野球部から追い出されて新体操で全国を目指さざるを得なくなる。

ラフの終盤もそういう展開。最終話の前からヒロインの二ノ宮亜美は主人公の圭介とライバルの仲西のどちらを選ぶかを2人の水泳の勝敗と無関係に決めていて、その上で本命は勝ちそうな方、応援したいのは負けそうな方だと言い、どちらにしろ主人公だけを肯定してくれるような存在ではないと示される。一方で以前二ノ宮が海で事故にあった際、仲西に救助の先を越されて無力感を味わっていた圭介は「タイムなんかどうでもいいんです。 今度おぼれた二ノ宮を助けるのは、絶対におれでありたい―― それだけなんです。」という決意を仲西に告げている。そして競技開始直前に仲西の方から「さ、亜美を助けに行くぞ。」と言い、圭介が「はい。」と答える。この会話の前に仲西は亜美とも話していたんだけど、実はその内容とは亜美が選んだ方を教えたことだと仄めかされていて、すると仲西はわかっていて「大したことじゃないですね。」という圭介の言葉に同意していたことになる。これは強がりというより、選ばれるためだけじゃなく自分が亜美と向き合っても恥じない男でありたいと2人とも考えていて、それをお互いにわかっているという意味だと思う。H2の比呂の終盤もある意味これに近い心情かな。比呂はひかりへの思いが届かないのを再確認した後、同じ学校でマネージャーの春華と将来は一緒になっているかもしれないと示唆されるけど、それも比呂がメジャーリーグに行き、春華はスチュワーデスとして、というそれぞれの夢を叶えた上でというかたち。

主人公とヒロインが両思いになる・なってイチャイチャすることより、主人公が両思いのヒロインと向き合うに足る男になったと納得することに重点が置かれている構造。

いままでと違うことをしようと始められたKATSU!はこういう点でも例外的。中盤で両思いがわかって付き合い始めた後に改めてヒロインや夢・目標に向き合う展開になる。