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色々な雑記。

H2の女房

昔の野球だと定番だった捕手の女房役呼びってあだち漫画だとH2までかな?クロスゲームからは、公式戦には出れないにしても女子も野球部に入るようになるし、これからは旦那の補佐=女房の仕事とするのは時代の流れにそぐわないということで。

H2第14巻の「バッテリーの呼吸じゃないでしょ。女房役の管は、ただ息をひそめてるだけです。離婚を恐れてね。」とか粋なセリフだけど、こういう皮肉は共通認識を前提にしてるから、もう新作でやると逆に野暮になりかねない部分かも。タッチでの弟の未亡人だった孝太郎との関係の変化も、H2での付き合いの長い女房役の野田との関係の安定感も、どっちも格好いいけど、あれはあの時代ならではの言い表し方か。野田の女房ネタなんてどれもバッチリ決まってて好きだから寂しくはあるんだけど。まあ自分は野暮な人間なのでこれからも自分で自分に言ってひとりでウケちゃうかな。だってクロスゲームの赤石とかいかにもいじらしくていい女房だし。それにラブコメ要素で本気のヒロイン論争が起きた時、脳内でエースの正妻はキャッチャーだよというオチをつけて逃避しとくとラクなんだよね。複数人の論争そのものをこのネタで混ぜっ返そうとすると往々にして火に油なので、あくまでも脳内のみで。H2なんていまだにヒロイン論争の火種が再燃することのある危険な漫画だからね。個人的には比呂が失恋を受け入れるストーリーとしてのメインヒロインはひかりで、比呂の相手は春華が仄めかされてる派。

H2では、中学が一緒だった4人の内の、比呂とひかり・英雄の関係の変化が話の軸になる分、3人に対して安定した関係を保ててる野田の存在は地味だけど重要。作中の役割だけでなくて、読者から見ても展開する人間関係の扇の要として野田は基準点になるポジションだ。野球勝負ではひかりを巡る比呂対英雄という構図になる点からも、同陣営で比呂を理解する役として野田は欠かせない。男女の四角関係としては千川の比呂・春華と、明和一の英雄・ひかりだけど、他の女を巡る戦いで春華に本音を打ち明けて頼りきれる程に、比呂は開き直れる男じゃない。本当に辛い時ほど隠そうとする男でもある。もっとも、そんな状況でも罪悪感を感じつつ春華から力をもらってしまう比呂と、打ち明けていない本心があるのを知ってても比呂を信じて励ませる春華というのが2人の関係ではあるんだけど。

中学からの4人の内の野田とひかりだと、第30巻での明和一対美斗工戦の会話が味わい深い。いいキャッチャーに恵まれずに英雄に敗れて泣くエースを前にしての、ひかりの「比呂をよろしくね。」と、野田の「ああ……」。ひかりは去年英雄と戦う前に負けてしまい泣いた比呂を知っていて、それでも英雄の彼女として比呂だけを応援するわけにはいかない。野田は自分がつきあえるのはこの夏までだとわきまえているし、だから自分が比呂を支えられる間は支えたい。地味に名前被りの多い作者とはいえ、このエースの名前が光(ひかる)なのは、名前に引っ掛かりを持たせて両陣営のヒーローの女房に目を向けさせる仕掛けの一環なのかな。

比呂と英雄の決着が付いた時の、比呂の涙の意味を知っていたのはひかり以外には野田だけだった。比呂のカラオケでの空元気をわかっているのも野田だけ。比呂と英雄があの試合に何を賭けていたのかを教えられていない春華は比呂の本音に気が付けない。たぶんでしかないけど、半ば以上英雄とひかりのためとはいえ、ひかりをまだ本気で好きなことを自覚して勝負に挑んだ時点で、その結果に関わらずに比呂のほうも春華から身を引いて別々の未来を歩むつもりだったんじゃないかな。本当に好きなんだな?の回の、冒頭の比呂・春華・野田のセリフはそういう意味だったんだと思う。春華を好きな気持ちも本当だからこそ、春華を裏切っている自分を許したくなかった。それでもこの夏の先も、仕事に就いてからも2人は同じ場所に進めることを意味する春華の冗談を比呂は受け入れて、次の試合に向けて前を見た。今現在の理解度としては中学からの付き合いのある相手のほうが上だけども、比呂が未来を感じられるのは春華だったんだろう。