メモ帳用ブログ

色々な雑記。

犬は昔から人間の身近にいて強い動物なので、魔物のモチーフに使われることもあれば退魔の力のある存在として扱われることもある。犬が魔物退治に関わる昔話の例だと、『桃太郎』では犬は主人公の桃太郎のおともで、『早太郎(しっぺいたろう)』では犬は主人公の早太郎。

『桃太郎』は民話。主人公の桃太郎のおともは犬だけでなく猿と雉も含めた3匹であり、3匹全員が同格。おともになり鬼退治に向かう経緯も桃太郎のきびだんごとのギブアンドテイクという昔話のリアリティでは筋の通ったもの。3匹をおともにすることができたのは桃太郎の持つ(おばあさんが作ってくれたきびだんごの)魅力のためであり、おともたちの活躍も桃太郎の活躍に含めて扱うだけの物語上の正当性がある。

『早太郎』は伝説。早太郎以外に退魔の力を持つ動物は登場しない。昔、遠州の見附宿(静岡県)には毎年生贄の娘を要求する悪神がいて、1人の僧侶が悪神らの天敵だという早太郎を探すための旅に出た。そして信州の光前寺(長野県内)で早太郎という名の犬と飼い主の和尚に出会い、事情を話して早太郎に悪神の正体である化猿を退治してもらった。話としては、この時に早太郎も飼い主の和尚も見返りを受け取っていないのが早太郎を主人公とする上での重要なポイント。もし僧侶が早太郎たちから条件や課題を出されてそれをクリアしていたら、昔話の構造上では僧侶が主人公になってしまう。この伝説では早太郎は化猿に深手を負わされて、どうにか飼い主の和尚の元にたどり着いたところで息を引き取る。こういう悲劇的で後に引きずるラストも伝説が地域に根ざした言い伝えとして長く生き残る上でのポイント。光前寺では現在も早太郎の墓がまつられていて、参拝客は後を絶たないという。