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色々な雑記。

屍者の13月、三眼がべらべら喋るその2。

白小小の回想パートは好き。感傷的な雰囲気作りがうまい。

光は屍者に従う村人を家畜と言ったけど、それだと白小小はその家畜の家畜になっちゃうんだよね。白小小が何度も強者に従って自分や村人を活かそうとした点は咎めたくない。白小小が光を殴って法屍者に引き合わせようとしたことだって、所詮よそ者だし別にいいと思う。村人がかつては皆仲が良かったというなら、父と母が生贄にされてるのを止められずに白小小が苦しんだように、2人が生贄にされてるのを止められずに苦しんだ村人だって大勢いただろう。でも光が村人は家畜と言った時に白小小も含まれることをこの時点でまるで意識してなさそうなのは未熟だからいいとしても、いい大人の白小小までがその点を意識せずに光に感謝していたのは少し嫌だな。

村人の中に進んで白小小の両親を生贄に捧げた人間がいるって真相ありきで、真相が判明する前から、白氏=可哀相、村人=家畜、子供=善良って図式にキャラの思考が飲み込まれている。繰り返しになるけど自分を三眼に引き渡すために村に連れて行こうとした白小小に対して、光が肩入れした理由の描写が弱い。せめて一目惚れだったら詳細を確認せずに村人を家畜扱いしたがる理由はわからなくもないんだけど、そういうんじゃないし。

西暦525年の村人が白大の家族を惨殺したシーンのショッキングな演出の勢いですべてをどうにかしようとしている感が強い。エンタメなら勢いに乗っかるのも好きだけど、第年秒先生的には難しいテーマに挑んだエピソードっぽいんだよな。

西暦525年の村人が野蛮だったらなんだっていうんだ?

この状況ってどう考えても元凶は人間を食ってる三眼なのになんでみんな内輪もめに夢中なんだろう。屍者は元人間なわけだし、結局は人間が醜いって話になるけど。不屍王とやらは完全な非人間かな。

人間の醜さを描くホラーを描くなら、理不尽の象徴である化物は意思疎通のできない存在にするか、意思疎通できるならあくまで直接契約した相手とだけ力と対価を交換する存在にするか、っていうのがシンプルに纏まる。

三眼がしゃべる内容は自分に都合のいい部分だけである。そもそも1000年以上前にこいつが村に屍疫をばらまいた件は棚上げ。というか第4話で言っていたとおりこいつは屍者が人間を食べるのは自然の摂理だと思っている。元人間のくせに。

白大の家族が殺された残虐性は強調するけど三眼が白大の体で村人100人近くを殺した残虐性はさらっと流す、白小小の両親が村人に追い詰められた部分は強調するけど白小小の両親が三眼に直接食い殺された部分はさらっと流す。こいつの話術にみんなが乗せられてる意味がわからない。全員馬鹿なのか?

三眼は蘇ってからの1年で相当な人数の人間を食べてるけど、黒山村からは白小小の両親しか生贄にされていない。だから三眼がいう「オレの存在に気づいた近隣の村の連中」は複数の村に渡っている。結構な広範囲になるはずだけど1年以上外部との交流はどうなっているんだ?役人や行商人や親戚の行き来はどうしているんだ?清朝末という設定で押し切れる?

三眼は生贄にされた人間の経緯に詳しいようなことを言っているけど、生贄にされた白小小の両親が白大の子孫だったから生贄にされたことを知らず、子孫であることを口実に生贄にされたことも知らない。知っていたら食わなかったとまで言っている。だから要は他の村からは始末したい邪魔者が生贄に差し出されてきたからお前の村もそうだろうと言っているだけで具体的なことは知らない。そもそも他の村の経緯の把握も正しいんだろうか。メタ的には正解なんだろうけど。

この世界の一般的な村人って法屍者相手によく交渉に行けるよな。生き返ったばかりで性格もよくわからない化け物と。自分を食い殺しかねない化け物相手に交渉しに行くってすごい勇気がいる。第1話の法屍者のイメージが強くて法屍者は人間を見たらバリバリ食うものだと思ってたけどそうでもない?むしろこれくらい面倒くさがり屋が普通?相手が法師じゃなければ家畜にするのが普通なのか?むしろ法屍者と村人の家畜関係はよくあることだけど光たちが世間知らずとか?あの世界の普通がよくわからん。

ヤクザに村の用心棒を頼むみたいなのはよくあるけどよっぽど切羽詰まってなきゃ信頼性は確かめるよな。人食い法屍者の信頼性とはなんぞや。逆によっぽど切羽詰まってるなら村長は村民を守ろうとするあまりに狂ってしまったということなのか?

この後若干間接的にネタバレ。

このエピソードのハリボテぶりは、最終的に三眼が自分に都合のいいことしか言っていない、話術に乗せられただけ、で押し切れる。ただ、テーマにも関わるけど最後まで読んでもよくわからない部分が多い。

西暦525年に白大の体を使って三眼は敵討ちをした。屍疫を疫病と信じていた村の生き残りからすると、白大の正体が屍者で敵討ちをしに来たとか、実は全ての黒幕は白大だったとか勘違いするんじゃないだろうか。

①伝承:薬売りが人体実験をして村人の半数近い100人が死んだ。

②(村人の目から見た)真実:村人(と一纏めにされているけど具体的には誰で何人?)が家族を殺したので、薬売りが屍者の力を使って敵討ちをして、村人の半数近い100人(伝承と数が合っている保証はないが)を殺した。

この2つだと伝承どおりだろうが真実どおりだろうが白氏に汚名が着せられるのは避けられない。むしろ後者のほうが、故意の殺人である分、一族が恨みを買いそうな気がする。嘘のがマシじゃないか?というか隣村程度の距離でよく妹やその家族は報復されなかったな。

妹の子孫が名字を守ったって点は中国的だし、いかにもありそう。その子孫が黒山村に来たのは三眼のいう通りどうしてだったんだろう?マゾ?むしろ伝承でぼんやりした形式に薄められたから子孫を切実に恨む人間がいなかったとか?

白大は家族3人を殺されて自分も死んだ。おそらくその具体的な実行犯は不明のままに、白大の死体を使った屍者は村人100人近くを殺した。仇討ちで死んだ人数のほうがずっと多いけど、この部分は一応貸し借り無しでいいと思う。一族の汚名だって、伝承も真実も大して違いがない。というか嘘がどうこう言うけどむしろ綺麗に伝承されすぎだし、かといって嘘がエンタメ的な仕掛けに活かされているわけでもない。むしろスケールの扱いが適当でハリボテっぽい。

現在の村人の罪では白小小の両親に難癖をつけて追い詰めたという点が重要だ。第4話で白小小は三眼は去年現れて村人全員の命を要求したと言っているけど、これは伝聞でおそらく正確ではない。ただし第3話で生贄である白小小を光たちが助けようとしたら三眼は怒って、光たちを村に連れて来ないと村人を皆殺しにすると言った。ネタバレになるけど、この次の話では隣の村で1人逃げようとして捕まって、一家皆殺しの目にあった話も出てくる。三眼によれば交渉しに来たのは人間のほうらしいけど、一度定期的に生贄を捧げる約束をしてそれを破れば皆殺しにするつもりではあるらしい。

第5話の村長の発言を見る限りだと、定期的に生贄を捧げれば村を外敵から守るという約束の内容を村長は知っていたっぽい。ここの繫がりは好きだな。それでも村長が三眼と交渉したのか、村人の誰かが勝手に三眼と交渉して村長に適当なことを吹き込んだのか、その辺を断定する材料は最後まで欠けたまま。村長が主犯っぽいけど詳細がわからない。嘘がどうこうの話なのにみんな勢いでしか動かない。

法屍者と交渉するのはごく普通なのか、他の村がまず交渉して黒山村にも同じことをするように勧めたのか、周りの村が法屍者と契約を結ぶ中で取り残されると全滅させられると思ったのか、黒山村の誰かが真っ先に交渉したのか、そういうこともわからない。