メモ帳用ブログ

色々な雑記。

第3話で白小小は高皓光たちの延髄あたりを殴ったが、気絶しなかったので、一緒に来てくれないと舌を噛んで自殺すると脅した。中文版だと「为什么不昏过去!(どうして気絶しないの!)」と言った。その時に高皓光は日本語版だと
「やめときなよ 舌を噛んで死ぬのは結構キツイらしいよ?」
と言っている。ここは中文版だと
「你咬吧,咬舌能自尽才怪。而且击打后颈无法使人昏倒。」
(直訳)
「噛みなよ、舌を噛んで自殺できるはずがない。それに首の後ろを叩いても人を気絶させることはできない。」
となる。ここで物語のお約束についてツッコんだ高皓光は、この後いかにも物語の主人公らしく振る舞おうとして失敗してしまう。そういう皮肉だ。
高皓光は実のところ舌を噛んでも人間は死なないという事実を伝えたつもりのようだ。でも白小小は実は死ぬ覚悟はないんだろうという皮肉として取ったらしい。ことあるごとに舌を噛もうとしているところを見せつけてくるようになった。
ついでに、人間はそう簡単に気絶しないとわざわざ高皓光に言及させている。これは借元真目を使う白小小と対峙した時に何もできなかったことと繋がる部分だろう。高皓光は人間はそう簡単に気絶しないと思っているし、かといって身体は人間の白小小にうまく手加減する自信もなかったから何もできなかった。
黄二果曰くこの時の白小小の身体は人間のままらしいが、どういう状態なのか。子どもたちに刺された後も三眼の遺した神通の働きでしばらく生きていた。でも屍者になったわけではない。ついでに求法者になったわけでもない。だから法力の生産はできないはずだ。ここで気になるのが借元真目が法力を消費するのかしないのかという部分だ。お話のお約束では術の行使には氣や法力の消費が伴うものだし、第9話で高皓光が護符を使おうとした時に姜明子は護符に注がれた高皓光の法力について言及している。だから断定はできないものの、借元真目で術を使う時も法力を消費しそうに思える。サケの稚魚が腹の卵黄を消費して成長するように、白小小も三眼が借元真目と一緒に遺した法力を消費して術を使っていたと自分は想定している。借元真目はあくまで肉体の一部が貸されたものなので、元の持ち主である三眼以外の法力は注げないようにも感じる。求法者の死体を屍者に変えられるのは不屍王だけだそうだし、もし白小小が子どもも皆殺しにして生き残ったとしても、大量殺人を犯した無能力の人間として生きることになったはずだ。白小小のその後はどうなるのか。三眼は自分が借りを返すことしか頭になかったから何も考えていなかったんだろうけども。
ついでのついでに、第3話の日本語版で高皓光は
「なーんかバカ仙人に仕組まれてる気がする… もしかしたらまたアイツに助けを求めることになるかもしれないな…」
と独白した。「仕組まれた」だと最後の結果まで姜明子が仕組んでいたような印象になってしまう。
中文版だと
「总觉得被那个王八仙君给阴了…… 这样岂不是… 又不得不向他求助了吗?」
「どうもあのバカ仙人に嵌められたみたいだ…… これじゃ… また彼に助けてもらうしかないってのか」
姜明子に助けを乞わなくてはいけない状況に陥れられたと高皓光は勘違いしたようだ。癪だけど、思惑通りにプライドを捨てて助けを乞えばどうにかしてもらえると錯覚した。でも実際は姜明子は高皓光を試そうとしていて、助けるつもりは全くなかった。

拾又之国(群青のマグメル)がテンセントで更新開始。
拾又之国(彩色版) - 腾讯动漫
拾又之国 - 腾讯动漫
テンセントではページ漫画として掲載されるんだな。第年秒先生の他の投稿を見る限りだと、完結章の開始を見据えたものではないようだ。

#拾又之国# 开始更新!这里是黑白版(欢迎捧场,拾又是故事后期远超前期的那种漫画,特别是安帝图尔之战[亲亲]) http://t.cn/A651VMmv ​​​
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微博

(直訳)
#群青のマグメル# 更新開始!こっちはモノクロ版(どうぞご贔屓に。マグメルはストーリーの後半が前半を遥かに上回るタイプの漫画、特にティトールのバトル) http://t.cn/A651VMmv ​​​

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第年秒先生は日月同错をこれからも長く連載したいけどお気に入り登録数が伸びないのは厳しいようだ。せっかく三川のエピソードは面白かったしテーマも明確になったのに大変だな。漫画、特にウェブ漫画は最初でコケて話題にならなくなると挽回が難しい。

前の投稿を一部再利用。
第3話で光たちと白小小が出会った時、白小小は勝手に助けられた上に、光の蹴り飛ばした屍者の上半身を頭にぶつけられて怒ってしまった。

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[第3話]屍者の13月 - 第年秒 | 少年ジャンプ+

その時の損害賠償を請求したいというセリフに続く言葉は日本語版だと
「哎呀 村長さんになんて報告すれば」 
中文版だと
「呀!头疼,需要看大夫*1请赔钱。」
(あ!頭痛い、医者に診せるから弁償して。)

ギャグなノリとはいえ、白小小には村の外に出て医者に見てもらうという概念がある。弁償という概念もある。ただストーリーからして山の外に出たことはないはずなので、隣村か隣の隣の村のくらいはもう少し大きくてそこには医者がいるということなのか。あるいは山に出て薬草を採ったりしていた父親から村の外にはちゃんとした医者がいるということを聞いていたのか。
清代の黒山村は辮髪とかの格好も清代の庶民のものだし、普通に時代に合わせた進歩をしている。別に外部から切り離された特殊な村というわけでは全然ない。おそらく清末の典型的で未開な農村として描かれているはずだ。ただし千年前の因縁という特殊な事情が絡んでくるから話がややこしくなる。

*1:『4 動詞 (医者が)診察する,診療する,(患者が)診察を受ける,診療を受ける. 用例 我什么病都看。=私はどんな病気でも診察します. 大夫 dài・fu 给我看过一次。〔+目(数量)〕=医者が1度診察してくれた. 找医生看看吧。=医者に行って診てもらいなさい. 你看什么科?〔+目(場所)〕=君は何科で診察を受けるのですか? 看急诊=緊急診察を受ける. 这种病还是 ・shi 看中医吧!〔+目〕=このような病気はやはり漢方医に診てもらいなさいよ! ◆この例文の‘看’は使役他動詞であり,「漢方医に診させる」の意味があると考えられる./〜门诊=外来の診察をする./〜眼睛 ・jing =目の診察を受ける./〜医生=医者に診察してもらう.』 cjjc.weblio.jp 大夫は郎中と同じく官職名を起源とする医師の尊称。中華民国以前は南方の広い範囲では郎中を、北方では大夫をよく使うが、区分けは厳密ではない。清代の小説の紅楼夢でも大夫=医師(清代では身分としての大夫はとうに崩壊し、官職名としての大夫も廃止されている。ただ文官の高級官僚という意味で大夫を用いることはある)。中華民国以降は全土で大夫のほうが一般的になる。 他にも中華民国以前はあまり使わない村長(村长)を使っていたりと、用語のチョイスはわかりやすさ優先な印象。

ヒガンバナは中国原産の植物だ。しかし「彼岸花」という日本独自の和名が近年中国に逆輸入されている。現代中国ではヒガンバナは「石蒜」と呼ぶのが一般的だ。
千葉大名誉教授の栗田子郎先生のサイトによれば、日本でヒガンバナと断定できる植物が文献に記録されるようになったのは室町時代以降だそうだ。『続群書類従』に収録される詩稿に「曼珠沙華」としてヒガンバナをうたった文章が含まれている。当時は僧侶の間で知られる珍しい花だった。全国に広まりだしたのも室町時代頃とされている。渡来自体がいつ頃だったのかははっきりしていない。縄文時代に渡来したという説も室町時代に渡来したという説もそれ以外の説もある。
だから日月同错で彼岸花から名を取られた彼岸山が西暦525年にあるのは歴史的には正しくない。でも動植物の呼び名が時代や地方に合っていないというのは歴史ものではごくありふれている。そもそもその時代の中国でのヒガンバナの呼び方は判明していない。比較的近い時代では、唐代に書かれた『西陽雑俎』でおそらくヒガンバナ属である植物を「金燈」として記しているそうだ(金燈は山慈姑の別名とされる。日本での山慈姑ユリ科のアマナのことだが、中国ではラン科の植物にも山慈姑と呼ばれるものがある。慈姑=クワイのような球根の植物であること以外は不明な点が多い)。現代中国で一般に使われる「石蒜」の表記が初めて文献から見つかるのは宋代の『図経本草』だという。
日月同错の「彼岸花」という表記からわかるのはこの作品が日本の強い影響を受けているということくらいだ。ただ文化の流れを考えて知ることにも意味はある。

〈研究ノート〉彼岸花にみる生活世界:命名と名称分布から

近代以前の中国では、日本の刀狩りのような強制力を伴う兵農分離が行われた時期はあまりなかった。清末は国家のほうが各地で結成された民兵義勇軍をあてにしていたくらいだ。しかし征服王朝だった清朝は軍事を掌握できなくなったことで求心力を失い滅亡していく。

明治維新の四民平等は下層の農民も上層の武士になれるようになったって意味じゃなく、元農民も元武士も平等だというスローガンだ。少なくとも建て前としてはそうだ。華族だの士族だのの身分についてはとりあえず置いておく。ちなみにこの四民は儒教思想による身分の区別である士農工商に基づいている。士農工商は身分の区別を表していても上下を表しているわけではないというのが現代の通説だ。
でも近代的平等はたいてい国民皆兵の成立と連動していたものだから話は複雑になる。イギリス、アメリカに続いてフランスで起きた市民革命は、王の処刑を伴う過激なのものとなった。王政を取っていたヨーロッパ諸国との関係は悪化。フランスはそれまでの傭兵や貴族に代わる国民軍を形成して他国に対抗する。国の主権は王でなく国民にあるからすべての(男性)国民は兵役の義務を負うというのが当時の徴兵制の大義名分だ。傭兵や貴族を主体とする旧体制的な軍隊を、フランス国民軍は士気の上でも数の上でも圧倒した。以後、多くの国で平等と国民皆兵が制度として取り入れられていく。
現代の欧米諸国はほとんどの国で徴兵制を採用していない。ただ今でも徴兵制を採っている国や地域はある。現在の日本は戦争を放棄している。
日本は、平安時代末に武家政権の誕生→鎌倉時代武家政権の確立→戦国時代末に刀狩による兵農分離→江戸時代に完全な封建制の完成→明治維新後の国民皆兵第二次世界大戦後の戦争放棄と社会体制が変化する。建て前やら実態やらはいつの時代でもゴチャゴチャしているけど変化は確かにある。