メモ帳用ブログ

色々な雑記。

あだち漫画はしゃっちゃかめっちゃかな人間関係を楽しむ要素が強いけど、『H2』は狙って当てに行った漫画だけあって序盤の人間関係がかなり整理されている。

主人公と別の学校にライバルとライバルの彼女兼主人公の片思いの相手がいて、主人公と同じ学校に主人公の地味で有能な女房役と主人公に片思いをするマネージャーがいる。主人公の高校には野球部がなくて、主人公がその創設に大きく貢献する。主人公のチームで新たなレギュラーになるキャラは、だいたいが登場からすぐに主人公と深く関わる。

ただし最初から成立したカップルである英雄とひかりの葛藤に関しては、見てて辛くなるというか、エンタメ的でないというか、だけど目が離せないというかで最終話までヤキモキしっぱなしだったな。終盤はみんなヒーローごっこと綺麗事で取り繕っていたツケを払わされるように人間関係がこじれてしまうんだけど、それでもギリギリのところでヒーローを演じることと綺麗事の価値を守り抜いたラストが自分は好きだ。

『MIX』は『H2』と割と似た人物配置に一見思えるんだけど、気軽に始めた企画というだけあって最初からきれいな配置になっていない点はだいぶ違う。良くも悪くもみんなバラバラに行動していて、主人公である投馬がドラマの中心に来る機会が少ない。投馬は最初から投手としての実力があるし、最初から野球部のメンバーはだいたい揃っているし、新加入するメンバーも特に投馬とドラマを起こす訳でもなく、事件は大抵向こうの方から解決してくれる。投馬は試合では実力通りに活躍してくれるし、作品として語り口がうまいから、主人公がドラマを強く牽引していないのに普通に楽しく読めるのはすごいんだけど。

ここまでの印象だと投馬と走一郎を軸に、音美も加えた義兄弟の関係性の避けられない変化と、その落としどころを描くことが話のテーマになるのかな。投馬と音美の恋愛模様は今のところうっすらとしか見えてこないけど、エンタメ的には重要なポイントなので期待はしたい。投馬・音美・走一郎・春夏の4人の恋愛が動いて関係が変わればエンタメ的に面白いし、テーマの回収にも繋がるはず。ただ『H2』みたいな野球に恋愛を持ち込んだ人間関係は描ききったのか、『クロスゲーム』では野球の戦いと恋愛の戦いにちゃんと線引きできるキャラばかりだったし、『MIX』でも投馬と走一郎の本気の葛藤は今のところ野球に絞っている。恋愛面はあくまで関係を変化させるきっかけに留めてあまりドロドロさせるつもりはなさそう。

投馬と走一郎は高校野球のバッテリーとしては最初から関係ができあがっている代わりに意外と決着の想像が難しい。そこそこの葛藤を経て、走一郎が投馬に肯定的な意味で最初からお前以外を選ぶ権利なんてなかったとか言うのもなんか違う気がするし。高校野球みたいな同じチームになってバッテリーを組むことを選ぶ権利があったり、あえて権利はないと主張することにドラマがある世界の先、プロの世界が無視できなくなって来ればまた変わってくるものもあるのかな。