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色々な雑記。

「とても仲のよい男の兄弟」と「とてもかわいい共通の好きな女の子」

今更ながらアニメ版からくりサーカスの最終話を見た。43巻の原作を36話に押し込める都合上、ダイジェストにするのか再構成するのかどっちつかずなところは終始響いてたけど、要所要所は力が入ってたし見て良かったと思った。終盤は慣れて割り切れるようになったし尺を多めに回してもらえたからグッとする場面も増えた。中盤のサハラ編が大きく割を食うことになったのは残念だけど。

大長編の原作をそこそこの尺でアニメ化する時に、エンタメ的に一番ノッてる中盤と、テーマ的に一番重要な終盤、どちらを取るべきかっていうのは正答のない問題だ。でも要約の仕方に不満は出ても、最低限原作理解が間違ってないことが伝われば、賛否を語るにしても語るだけの甲斐がある作品にはなる。

藤田和日郎漫画と島本和彦漫画とあだち充漫画を読んでる人間にとって思い出深いのが藤田和日郎先生と島本和彦先生の合作読み切りの『からくり逆境サーカスナイン』。

いつまでも初恋に執着するダメ老人・ダメ弟系のラスボスとして一部の人間から熱烈に支持を受けるフェイスレス。それをもじった面目なし(メンモクレス)は『からくり逆境サーカスナイン』でも存在感抜群の敵として立ちはだかる。むしろ実質主役。メンモクレスは「とても仲のよい男の兄弟がいて、とてもかわいい共通の好きな女の子がいたんです。でも弟はその娘を自分だけのものにしたくて、その娘を甲子園につれていったあとで結婚すると約束を」というどっかで聞いたような話を聞きかじって、自分に勝手に重ねて感涙。挙げ句、甲子園に出場しようと『逆境ナイン』のメンバーを閉じ込めるなどの無茶苦茶をやらかし、『からくりサーカス』の主人公たちをもじった面々と野球で戦うことに。この「とても仲のよい男の兄弟」と「とてもかわいい共通の好きな女の子」はシルエットだけの登場だけどあだち先生自身が描いているそうです(マジで)。

藤田先生とあだち先生の繋がりで個人的に印象深い話がもう1つ。「永久保存版 あだち充画業40周年記念! ゲッサン2010年11月号別冊付録」の中に藤田先生のあだち先生への思い出を綴ったエッセイコミックが収録されていて、『H2』終了後にラストの展開について尋ねていろいろ語ってもらったエピソードが載っている。尋ねたのがいつかは書かれていないから前後関係は不明だけど、『からくりサーカス』で「過去にとても仲のよい男の兄弟ととてもかわいい共通の好きな女の子がいて弟が初恋を諦められずにみんな不幸になり、その因縁が巡って現代のとても仲のよい兄弟同然の男たちととてもかわいい共通の好きな女の子が地球規模の事件に巻き込まれて、弟分が兄貴分と女の子の仲を祝福することでハッピーエンドを迎える漫画」を描く藤田先生としては、『タッチ』はもちろん『H2』のラストに特別の関心があったのかもしれない。