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ほぼ再掲

人間が何を倫理的だと感じられるかという思考実験で有名なものにトロッコ問題がある。
多くの人間は、5人が横たわる線路へ暴走トロッコが突入するのを防ぐために線路の切り替えスイッチを入れた結果、切り替わった線路にいた1人が轢かれてしまうのは、倫理的にやむを得ないと考える。
一方で暴走トロッコに5人が轢かれるのを防ぐために、その手前に特別体重の重い1人を突き落とすのは倫理的でないとも、多くの人間は考える。
1人を犠牲にして5人を助けるという結果は同じでも過程が違うと倫理面でのジャッジが変わる。

また、医学界新聞の記事によると、腹内側前前頭葉皮質(VMPC:ventromedial prefrontal cortex)に傷害のある患者は、トロッコ問題に対して常人とは異なった判断を下すことも示されている。VMPCは以前から、同情・羞恥心・罪悪感といった「社会的感情」に関与する領域として知られているが,この領域に傷害がある患者は、例えばトロッコ問題に対して、「多数の命を助けるためには、隣に立っている人を橋から突き落としても構わない」と答える傾向が際立って強いことが明らかにされ、倫理的判断は理性と感情のバランスの下に下されるとする説が一層信憑性を強めることになったという。


こうした倫理を説明する理論の1つに二重結果論がある。倫理的な行動(例︰5人を助ける)を取ったことで、予見できる帰結として望ましくない副作用(例︰1人が死ぬ)が起きたとしてもそれは許容される。しかし倫理的な帰結(例︰5人が助かる)を生じさせるためだったとしても、意図して望ましくない行動を取ったら(例︰1人を殺す)、その行為は許容されない。こういう理論だ。これで説明できることは多い(例︰カトリック圏で中絶を認めていない国でも、妊婦の病気を治療する過程でやむをえない場合は胎児を死なせることを許容する)。でもこれだけでは説明できないことも多い。