メモ帳用ブログ

色々な雑記。

ストーリー全体の縮図になるエピソードがある作品の例でいうと、最近の作品なら鬼滅の刃の那田蜘蛛山編は話題になっただけあって上手く出来ている。
鬼のトップはパワハラで部下を従えている。部下たちには思わず同情してしまう面もあるけど食った人間の数は到底それで許せるレベルを超えている。鬼殺隊には微笑んだまま厳しいことを言う怖い女性もいるけど、滾る怒りを抑えながら理性的な言動をしようとして無理が出ている訳だから、サイコパスとは違う。
鬼滅の刃は作品として、人を殺した鬼は殺すしかない、鬼を生かしたいなら人を殺させてはいけない、という点を徹底しているからわかりやすい。作品によっては人を殺した化け物を許せるかという部分が焦点となることもあるけど、それは鬼滅の刃のテーマではない。作品によって結論が違ったり、1つの作品でも異なる立場によって異なる結論を併存させたりテーマの掘り下げに伴って暫定的な答えが変化したりするのは当たり前だ。でもエンタメならテーマがわかりやすく整理されていることはプラスが大きい。
主人公・炭治郎は鬼にされてしまった妹を人間に戻すことを望んでいるが、修行をつけてくれた師匠からはもし妹が人間を食ったら妹を殺して炭治郎も死ななくてはいけないと言われ、その覚悟を固めている。この点や家族のあり方も那田蜘蛛山編のボスの鬼とは対象的になっている。
鬼滅の刃は炭治郎が鬼にされた妹を人間に戻そうとする少年漫画だ。そして味方陣営でその理解者を徐々に増やしていく。鬼を庇おうとする炭治郎の行動は、通常なら鬼殺隊からは許容されない行いだ。だから初めて出会った鬼殺隊の隊員からは、お願いしても無駄だ、自分の行動でなんとかしろ、という内容の厳しい叱責を受けた。そして実際に行動で何とかしようとした結果、最初の味方になって貰えた。その後も鬼殺隊の先輩たちからは大抵妹を殺したほうが良いと正論を言われてしまうが、そうした意見をことごとく行動で覆していく。主人公が妹と二人きりで生きていこうとするのではなく、妹と自分が生きていくことを行動で周囲に認めさせていく展開が特徴的な作品だ。そして最後には味方を増やしたことが実を結ぶ。