黒山村のエピソードは千年以上続く根強い差別を扱った話でなく、千年前の事件という些細な口実を蒸し返して因縁をつける人間の弱さを扱った話。しかし千年という時間は人間には遥かな過去でも屍者にとっては身近な時間だった。だから黒山村は滅びた。
ただし三眼が人間としての自分の名前を覚えていないのは三眼に自分の人間性を保とうとする意思も精神力もなかったせい。人間性を保つ決意があれば上官宵や趙炎のように自分の名前を覚えていられた。
黒山村のエピソードは基本的にはイカレ野郎とバカたちが利用し合おうとして全滅したというだけの話なんだけど、そこに人間としてのあり方とか運命に操られているとかのごちゃごちゃしたテーマが絡んでくるからややこしい。
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前に書いた部分と重複するけど改めて整理。
日本語版では黒山村以外にも2つの村(合計3つ)が生贄を捧げていたという説明が削られている。
第6話で光の言った「いや… 檻がなくなれば逃げる分豚たちの方がマシか」に対する村長の返答。
日「黙れ小僧!(中略)そもそも今まで大屍仙さまから逃げおおせた生贄はただの一人もおらん(後略)」
中「住口!(中略)更何况上尸大人神通广大,供养他的村子有三个,这一年来就没听说哪个人能活着逃离的!(後略)」
直訳「黙れ!(中略)まして大屍仙さまの神通力は広大だ。彼をお祀りしている村は3つあり、この一年生きて逃げられた人間なぞ聞いたこともない!(後略)」
生きて逃げられないのは生贄だけでなく3つの村の人間全員。そうでないなら白家は生贄を押し付けられそうになった時に3人揃って逃げればよかった。少なくとも白小小と母親は逃げられた。
第8話の冒頭によれば、隣村では逃げようとした人間が三眼の神通力で捕捉されて一家皆殺しにされたという説明を村長から?白小小の父親が受けている。
この2点だけだと村長が嘘を言ったと解釈できなくもない。しかし第7話で三眼が
日「そんな時 オレの存在に気づいた近隣の村の連中が 自分たちの家族が巻きこれないよう先手を打ってきた」
中「周围几个村子的人有老一辈看出了有涅槃尸在杀人。他们为了祸害不引到自己家族。」
直訳「周りのいくつかの村の人間には人を殺してる法屍者がいるのに気付いた年寄りがいた。彼らは自分の家族が災いに巻き込まれないようにした。」
と語っているので村長の言ったことは本当。
三眼は西暦525年に村から離れた白大と阿柴を襲ったし、西暦1906年でも生贄の白小小が光たちに助けられそうになった時は村人全員の命を人質にして脅迫した。
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「~才有的…」は「~ならではの…」のニュアンス。
「必须… 拥有本命神通,才有的选择!(必要だ… 本命神通を持つからこその選択が!)」ってのは、一人だけでは何もできない自分を認めて、他人の護符を充分に使える自分の神通を覚醒させて、その力で他の人間を守るってことだ。他人の護符を充分に使える以外の能力がほしいという意味ではない。
高皓光の把握する因果とは全ては繋がっているということだと第2話で示されている。
自分ならではの選択をするという第16話の決意から繋がる話↓
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反トランプ派なのでバイデン氏勝利がほぼ決定で嬉しい。開票途中まではどうせ隠れトランプ派が多くて再選するんだろうと思っていたのでなおさら。現実世界も捨てたものではないと思える。
ただこういう不安定な時勢だと、トランプ氏のようなわかりやすくてマッチョな政治指針を支持する人も多いのはわかる。表立って言いにくくても強大なものに身を委ねる安心感は確かにある。
「分断でなく団結させる大統領に」はアメリカの影響をモロに受ける日本の人間としても実現してもらえたら嬉しいけど、先行きは大変そうだ。下手に綺麗事を振りかざしても支持者と批判者の間で分断が進むだけだし、前回の選挙前後では反トランプ派がトランプ派を襲撃するような事件もあったし。おまけに今回は開票中から既に陰謀論が飛び交っていたし。
日本以外の国の反応も色々だ。