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H2の「──それだよ英雄」

ストレートを英雄に完璧に打たれた比呂は敗北を確信する。しかし打球は強風で流されファールに。「ちくしょう…… どうしてもおれに勝てって……か。」と比呂に感じさせた存在は、この後比呂に二度と投げられない球を投げさせただれかと同じもの。第一にはベンチで写真として比呂を見守っていたひかりの母親のことのはず。でもそれだけじゃなくて、比呂をヒーローとして応援する周りの人間でもあるだろうし、野球の神様みたいなものでもあるかもしれない。

英雄が比呂からホームランを打てれば張り詰めた糸は切れるはずだと期待を捨てない明和一の稲川監督。確かに比呂は英雄で余力を使い切ってしまうだろう。

一、二、三……とロージンバッグの投げ方で野田にサインを送ったらしい比呂。サインはスライダー。英雄は100%ストレートを信じ切った目をしているが、ついさっきストレートを打たれた以上、確実に勝つためにはスライダーを投げるしかない。「──それだよ英雄。 忘れるな。 その融通の利かねえバカ正直さに── 雨宮ひかりはホレたんだ。」という比呂の独白は、悪役に徹し切って英雄に勝利することで、比呂を信じた実直さへの誇りを英雄自身に持ってもらうためのものだったはず。リリースの直前まで比呂はスライダーを投げるつもりだったようで、稲川監督にもスライダーを投げようとしていると、おそらく握りから判断された。しかし比呂の投球の直後に英雄はストレートと判断し、実際にあまりにもあっけなくストレートど真ん中で三振を奪われる。比呂が最後の最後にストレートを投げる、あるいは投げさせられることは野田も信じていた。何も言わず信じあった2人の目線を合わせないままの会話には、人生最後の一大事が終わってしまった後の妙な寂しさがある。比呂の計算とは逆の行動を無意識に取り、かえってうまくいくというのは、比呂だけでなく英雄の側でも起きる。詳しくは最終回。英雄が負けた姿を見て、そしておそらく比呂の気持ちが伝わったこともあって涙を流すひかり。英雄を信じていた一方で、敗北を見ることで解放されたような気持ちはひかりの側にもあったのかもしれない。

英雄に勝利した直後、ひかりへの失恋を改めて悟って涙を流した比呂。春華にその涙の意味はわからない。比呂の涙が勝利の涙ではないことを知っていたのは野田。そしてひかり。ひかりは身を引くために姿を消した英雄を探し、夕陽の甲子園浜海浜公園で見つける。