メモ帳用ブログ

色々な雑記。


こういう、生きていくのに必要のないことになぜ人生の喜びがあるのか、みたいなテーマの作品は大好きだ。
たっぷりとしたセリフのないページに情感が溢れている。
タイトルのトリプルミーニング(ネット情報によればクアドラプルミーニング)が綺麗に決まっていた。

タイトルのルックバックには4つの意味がある
①振り返る。主人公・藤野が京本との思い出を振り返る。
②後退する。主人公・藤野の思いが時間を遡り過去を変えたように見えたが…。
③背中(back)を見る(look)。普通はこういう読み方はしないがあえてそう読ませている。「背中を見る」を普通に英訳するなら「look at the back」。藤野と京本は直接顔を合わせられない時もお互いの作品を読むことで学び合っている。
④Don't look back in anger。怒りとともに振り返ってはいけない。ネットで指摘されていたが、本編最初のページの黒板にDon't、最終ページの山積みになった本の表紙にIn Anger。Oasisの曲の「Don't look back in anger」はイギリスで自爆テロが発生した際に鎮魂歌として歌われた。

この作品をこのタイミングで発表するということは、京都アニメーションの事件に捧げる意味が込められていると読んでいいはずだ。
作中で特に重要なのは③の意味。京本が殺害されたことで藤野は二度と京本と顔を合わせることができなくなった。二人で合作を続けたかけがえのない日々は二度と戻ってこない。しかし二人の絆は顔を合わせる以前から作品を通じて育まれていたし、これから先も作品を通じて生み出され続ける。


夢だけど夢じゃなかったと思ったらやっぱり夢だったけど、夢のまま終わらせないぞ、的な。
以下自分の解釈。
藤野はもしあの4コマが過去に遡り、あの時に京本と顔を合わせず、姉の誘いで入ったカラテ教室を続け、不審者から京本を救出できていたら、と夢想してしまう。その直後にその夢想をそのまま形にしたような京本の4コマを発見する。虚を突かれたまま京本の部屋に入り、それが京本の部屋の窓に貼られていた4コマの1つが剥がれて飛んできたものだと気付く。京本の部屋には藤野の『シャークキック』が並んでいた。京本の4コマは『シャークキック』の内容に影響を受けて描かれたもののようだった。藤野の夢想と、藤野の漫画に影響を受けた京本の4コマの内容が似るのは当然といえば当然だった。藤野は初対面の時に「藤野歩」と背中にサインした服を京本が取っておき、部屋にかけていたのを発見する。京本が自分の背中を見続けながら前進してくれていたことを確信する。藤野は仕事場に戻り、京本の4コマを裏に返してそこの窓に貼る。藤野は今度は自分が京本の背中を見続けながら前進することを誓う。