メモ帳用ブログ

色々な雑記。

ルックバックの読み方を抜本的に見直し。
あの世界は並行世界かつ藤野はああした内容を想像すらしていなかったと読むのが良さそうだ。
藤野は自分があの時に漫画を描かなければ京本は部屋から出てこなかったはずだと思い込んだ。京本を部屋から出してやったのは自分だし、京本が絵が上手くなりたいと思ったのも自分とより良い漫画の合作をするためで、すべては自分がやってやったことのせいだと考えたからだ。自分が京本の手を引き、導いてきたことに思い上がり過ぎていた。藤野は京本が美大に行きたいと言った時も上から目線でマウントを取って京本の意思を遮ろうとしてしまった。
だが並行世界の京本は、藤野から手を直接引かれずとも、自分なりの動機と努力で美大に合格した。小学生の時に楽しみにしていた藤野の4コマに勇気付けられ、背中を見るように憧れた部分もあったのだろう。そしてやはり事件に巻き込まれるが、カラテを続けた藤野によって救出される。合作者の不在で人生が変わったのは藤野のほうであるらしい。しかしこの2人も最終的には漫画の合作をすることになる。京本の美大進学も含め、過程が変わっても同じところに行き着くという点は作中作のファーストキスが伏線になっている。
藤野は自分が手を引かなければ京本は美大に行かないと考えた。しかし並行世界から届いた京本の4コマでその認識を変える。突然目の前に現れた京本の4コマは、明らかに実体験をモチーフにしたものだった。その中で京本は藤野を初対面の時と同じく藤野先生と読んでいた。しかし題材は美大で起きたあの事件そのものだった。ここで初めて藤野は自分が手を引かなくても京本が美大に進学していただろうことに思い至る。その上で自分がカラテキックで犯人を倒して京本を助ける、ハチャメチャだが夢のような世界がある可能性に気がつく。
京本の部屋のドアを開けた時、藤野は部屋の中に元気な京本がいることを期待したはずだ。しかしやはり京本はいなかった。この世界の京本は何があろうと亡くなったままだ。それでも、この世界の京本が『シャークキック』を読んでくれていたただけでなく、初対面の際に「藤野歩」のサインを入れた服をずっと部屋に飾ってくれていたことを藤野は知る。藤野が手を引くまでもなく京本は前進していたが、藤野の背中は京本の力になり続けていた。それとともに藤野は京本との合作を楽しんだかけがえのない日々を思い出す。いくら悔やんでもこの自分は過去に戻れず現実は変わらないと藤野は悟る。藤野は別の世界の可能性を垣間見せてくれた4コマ用紙を部屋に貼る。小学生の頃の藤野は、見知らぬ京本が描く絵の背中を追うように、絵と漫画を磨き続けていた。今度はこの4コマ用紙を背中にして漫画を描き続けるはずだ。