■
『風立ちぬ』の狙いについては、公式サイトに載っている企画書の文章を読めば丸わかりだ。
自分の夢に忠実にまっすぐ進んだ人物を描きたいのである。夢は狂気をはらむ、その毒もかくしてはならない。美しすぎるものへの憬れは、人生の罠でもある。美に傾く代償は少くない。二郎はズタズタにひきさかれ、挫折し、設計者人生をたちきられる。それにもかかわらず、二郎は独創性と才能においてもっとも抜きんでていた人間である。それを描こうというのである。
オタクは丸わかりのはずのものにああだこうだ言いたがってしまう。楽しいから。
終わりが悪ければ不幸だというなら、すべての人間は死ぬんだからすべての人間は不幸ということになる。そんなことはないだろう。
ズタズタに挫折して終わったとしても飛行機に人生を掛けた二郎は幸せだっただろうし、二郎に会うために山の病院を出た菜穂子も幸せだっただろう。