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環境破壊を食い止めるのは人間のため、という言説は冷たいようで正しいと思う。人間以外の動物は他種を食い物にしても気にしない。さらに言えば同種でも自分の遺伝子を残すのに有利に働かない限りは利他行動を取らないのが普通だ。ほとんどの生き物は利己的な遺伝子に従って自分の遺伝子を増やすべく行動している。人間の行動に自制が必要なのは、無制限に欲望に従うと長期的に見た場合に自分の遺伝子を残すのに害になる可能性を自覚せざるを得ないから、というのが合理的な意見だろう。
ちなみに人間は環境破壊で自分の首を締めることを、ある種自意識過剰気味に人間特有の行動だと思いがちだが、実は違う。地球史上で最も甚大な環境破壊を引き起こし、あわや自分の種どころか全生物を絶滅させかけた生物としてシアノバクテリアが挙げられる。シアノバクテリアは植物の葉緑体の祖先といえる細菌で、DNAが核膜に包まれていない原核生物だ。酸素による好気呼吸を行う生物がまだおらず、すべての生物が酸素を用いない嫌気呼吸を行っていた時代に誕生した。そして光合成により温室効果ガスである二酸化炭素を吸収し、酸素を放出する。温室効果ガスとは地表から放射された赤外線(地球の場合は主に太陽→地表→大気というルートをたどる赤外線)を吸収して気温を上昇させる効果のあるガスだ。酸素によってメタンなどの温室効果ガスは酸化して大気中からほぼ消え去った。その他にも様々な要因が重なり、地球全体の温度が低下して約22億年前に全球凍結が引き起こされたと考えられている。

原核生物が大量絶滅したが、深海や火山周辺の海に生息する生物は生き残った。約20億年前に酸素を利用して二酸化炭素を放出する好気呼吸を行う生物が誕生し、増殖。DNAを核膜に包んで保護する真核生物も誕生した。約7億年前と約6億年前にも起きた全球凍結を経て(これにより多細胞生物が誕生)、やがて酸素濃度と二酸化炭素濃度が一定のところで釣り合うようになり、気温はほぼ現状で安定した。
人間がやっているのはこの逆だ。人間の場合に問題となるのは、人間は自らの引き起こした環境破壊にシアノバクテリアほど耐えられそうにないという点だ。また先進国の引き起こした地球温暖化の悪影響を真っ先に受けるのは往々にして発展途上国であるという点も、倫理面や経済面で問題がある。それに、社会とともに発展させてきた現在の倫理観からすると、やはり人類の活動が多種の生物に被害を与えている現状を完全に無視するわけにもいかない。
ところで温室効果ガスの効果はガスの種類と密度によって決定される。火星の大気はほぼ二酸化炭素だが、大気そのものの密度が地球と比べものにならないほど低い。そのため温室効果ガスが足りずに低温の星となっている。もし火星をテラフォーミングするなら酸素だけでなく二酸化炭素などの密度も人為的に上げる必要がある。だが現在のところ地球の環境破壊を食い止めるよりも困難だと判断せざるを得ない。