メモ帳用ブログ

色々な雑記。

有史以前の人間の家のあり方についてメモ。

系統的には異なるが、メラネシアミクロネシアと同じような根栽農耕社会は熱帯アフリカやアマゾン川流域の先住民社会に広く分布している。マリノフスキーは、母系社会であるトロブリアンド諸島民を人間社会のもっとも原始的な形態として分析したが、このの時代には、原始時代の人間社会は「原始的」な「乱婚」が行われる母権制の母系社会であったという説が有力であった。

その後の研究によって、人間社会の原型は(とくに東〜南アフリカに少数が残存している)狩猟採集社会であり、はっきりした単系出自集団を持たない(双系社会)ということがわかってきた。

根栽農耕社会は母系出自集団を発達させる傾向が強く、集約農耕社会や牧畜社会は父系出自集団を発達させる傾向が強い。(→「単婚と複婚」「出自の規則」)これは、進化の段階の高低ではなく、むしろ、別方向への社会進化だといえる。

一般に、社会の生産力が上がるほどに労働時間が長くなるというパラドックスが知られているが、平均すれば根栽農耕社会では狩猟採集社会よりも労働時間がやや短い(→「文化としての勤勉と強迫」「生業と労働時間」)。

母権制
ぼけんせい
matriarchy
女性が社会において重要な地位をもち、家族内での権威や政治権力を握っているような社会体制をいう。かつては、人類社会の進化史上、父権制の成立に先だって普遍的に存在していた社会体制であると信じられていた。母権制の存在および母権制先行説は、19世紀の後半にバッハオーフェンやモルガンらによって、社会進化論の立場から提唱されたもので、当時の支配的な学説の一つとなり、20世紀に人類学者により決定的な反駁(はんばく)が加えられるまで、数多くの論争を生んだ。モルガンの影響を受けたエンゲルスによって、マルクス主義の教義にも取り入れられたことは有名である。
 彼らの説によると、人類社会は、その進化の始めにおいて原始乱婚の時代をへ、生物学的にみて父性よりも母性のほうがはっきりしていることから、ついで、母と子の紐帯(ちゅうたい)を集団構成の核とする母系制の時代へと進んだ。母性しかわからなかった時代には、母親が一家や一族の中心として権威・権力をもち、ひいては全社会においても、女性の地位が優越していたであろうというのである。しかし実際には、母権制の例として提出された社会の多くは、財産相続や出自を女性を通してたどる母系制をもつにすぎず、そこでも財産の管理運営や政治的権力は男性の手中にあることが普通である。過去においても、実際に母権制とよびうるような制度が存在していたかどうかは大いに疑わしい。母権先行説の進化論的枠組みの単純さと、そこに含まれる誤謬(ごびゅう)、母権制と単なる母系制との混同、実証的根拠の欠如などから、今日では彼らの説はほぼ完全に否定されているといっても間違いではない。今日の文化人類学の基礎を形づくっている親族研究の発展に刺激を与えたという功績を別にすれば、母権制をめぐる数多くの議論は不毛なものであった。
[濱本 満]

日本は平安時代中期まで男が夜に女の家へ通い、子も女の家で育てる妻問婚が一般的だったとされる。姓氏や官位の継承をはじめ父系的傾向の強い社会ではあったが、母系的な要素もあった。有史以降日本の社会は東アジア北方の集約農耕民族である漢族の影響が特に強くなるが、有史以前は東アジア南方〜東南アジアからの影響も受けていた。現代日本人の遺伝子には北方系と南方系の両方の要素が見られる。

日本神話である大気都比売神保食神の神話は南方系の「ハイヌウェレ型神話」に分類される。東南アジアから中国南方を経て日本に伝わったと考えられる。伝来時期については議論があり、いわゆるトンデモ説に近いが縄文時代に粗放農耕(根栽や雑穀の焼畑など)の伝来とともに伝わったという説もある。原型では排泄物が食料や宝物となる少女の死体を分割して埋葬したところ、埋葬地のそれぞれからイモ類が発生する。死体を分割して埋葬することとイモ類の栽培方法の類似が指摘されている。