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色々な雑記。

自由民主主義的には、他人の自由を侵害する悪を規制するのは自由を守るために必要なことだけど、何かが定めた善以外を規制すれば自由を妨げることになるから行ってはならないというのが原則だ。これは自分にも納得できる。政治が世の中の大半を占める悪い意味で普通の人々まで迫害するべきではないし、他人の自由を侵害していない相手を多数派や有力者と流儀が違うという理由で規制するべきではない。何かが定めた善以外を規制するというのは、右のファシズムにしろ左の共産主義にしろ全体主義的なやり方だ。
ただし悪の規制と特定の善以外の規制は線引が難しい。まさに現在のロシアがネオナチという同意を得やすい悪のレッテルを使ってごく普通のウクライナ人を虐殺している。
もし実際にウクライナの軍隊や国家親衛隊などの準軍事組織がネオナチ思想に基づいてロシア系住民を組織的に虐殺していたのなら大問題だが、そのような証拠は存在しない。ことさらにネオナチ的な行為が確認された訳でもない。ウクライナの軍隊や準軍事組織にネオナチ思想を持った人間が存在するのは確かだが、こうした組織はどうしても右翼的で暴力に抵抗のないネオナチ的な人間の割合が高くなりやすい。世界中のほとんどの国がそうだし、ロシアもそうだ。ロシア政府の汚れ仕事を担っていることで有名な民間軍事会社のワグナー・グループにも、ワグナーとヒトラーの関係が示唆する通りに、ネオナチ思想を持った構成員は多数在籍している。
また、差別的で危険な言動は程度に応じて取り締まりの対象となるが、どんな思想でも思想を持つこと自体を禁止することはできない。それが現在の民主主義国家の原則だ。ロシアも名目上は民主主義国家だ。もっとも名目上は朝鮮民主主義人民共和国も民主主義国家ということになっているので、現在の国際社会は本当に名目に実態が伴っていなくはあるが。
そうした現実や原則を無視して、ネオナチ思想を持った成員がいるからウクライナの軍隊や準軍事組織はネオナチ組織であり、ネオナチ組織を受けれてきたからウクライナの民間人も消極的なネオナチ支持者であり、ネオナチ支持者は民間人だろうと粛清すべきだとするロシアの主張は明らかに間違っている。ロシアは長年全体主義陣営の盟主だった国家であり、全体主義は個人の違いよりも国家の一体性を重んじる思想ではあるが、それにしてもレッテル貼りの度が過ぎている。