メモ帳用ブログ

色々な雑記。

月島はいご草ちゃんに戦争が終わったら駆け落ちしようと言った。軍隊に入っても金は貯まらないから、それでは佐渡ヶ島で将来に向けて少しずつでも貯金していたんだろう。徴兵で強制的に佐渡ヶ島から離れるまでなかなかいご草ちゃんに駆け落ちを切り出せなかったのも、月島の性格を考えれば説明がつく。月島は離れ離れになればいご草ちゃんもいご草ちゃんの両親も辛い思いをすることを案じていたはずだ。月島がそうした点には思い至る男であることはスヴェトラーナの一件で示されている。
それと、駆け落ちしようという言葉が、自分は新発田の第二師団の志願兵となっていご草ちゃんを養うからいご草ちゃんも新発田に住んでくれという意味であることはありえない。下士官や兵卒は給与が低いとか、現役だと営外居住が認められていないとか、この時期だと結婚が認められていないとかの知識が必要なことを抜きにしても、佐渡の人間が新発田に徴兵されて月島と会ったら一発で駆け落ち先がバレてしまうからだ。月島は悪童として佐渡ヶ島で有名だった。そんな月島と交際していたいご草ちゃんが突然島から消えたら、月島がいご草ちゃんを連れ去ったという噂はあっと言う間に島中に広がる。そして新潟の第二師団には当然佐渡ヶ島から徴兵された人間もやってくる。あの月島が第二師団にいたからいご草ちゃんも新発田にいるのではないかという話は当然いご草ちゃんの家族の耳にも入る。となると、両親は連れ戻しに来るだろう。そうした心配がいらないなら、ただ島の外で一緒に暮らそうと言えば良く、わざわざ駆け落ちという言葉を使う必要はない。