メモ帳用ブログ

色々な雑記。

2つ前の投稿の付け足し。
月島は佐渡訛りの男すら鶴見の仕込みだったことに気がついてしまった。そして第210話で鶴見が鯉登親子に行った工作を暴露しながら、自分が受けた仕打ちについても打ち明ける。月島は鶴見から「戦友だから」と言われたことも、それにより砲撃から鶴見を庇う気持ちになったことも、鶴見の計算でしかないことを悟ってしまっていた。

わざわざ9年越しに種明かしして…
傷をほじくり返して
枯れ果てたところに
自分の愛情を注ぎ込む
私を救うのにどれだけ労力を費やしたか訴えるわけです
彼のためなら命を投げ出し
汚れ仕事も進んでやる兵隊を作るために
でもまあ…
別に良いんです
利用されて憤るほどの価値など元々ありませんから
私の人生には

鶴見の目的に対する月島の推察は当たっている。鶴見は宇佐美との出会いを経て、汚れ仕事をいとわない兵士を作るためには愛を利用するのが有効だと考えるようになっていた。その方法を月島で試し、上々の成果を得た。
鶴見が「戦友だから」と語りかけた時点で、月島は疑っていたにも拘らず命懸けで鶴見を庇った。これは愛のためだ。さらに鶴見が月島を救うための佐渡ヶ島での工作にどれだけ労力を費やしたのか訴えた後、月島は「鶴見中尉殿に救われた命ですから 残りはあなたのために使うつもりです そして死んでいった者たちのためにも」と言った。鶴見はこの言葉を引き出したかった。
もしいご草ちゃんが殺されたのが本当で鶴見が佐渡ヶ島で工作を行ったのが嘘だと月島が考えたとしたら、月島は自分の実際の境遇と努力により死刑を免れたことになる。鶴見でなく社会から生きることを許されたことになる。それなら「鶴見中尉殿に救われた命ですから 残りはあなたのために使うつもりです そして死んでいった者たちのためにも」という言葉は引き出せない。「死んでいった者たち」の中にいご草ちゃんが含まれているなら月島は髪を捨てたりしなかっただろう。「利用されて憤るほどの価値など元々ありませんから 私の人生には」とも考えない。佐渡ヶ島での工作を信じていないのなら「私を救うのにどれだけ労力を費やしたか訴えるわけです」というセリフも座りが悪くなる。
佐渡ヶ島で月島を死刑から救うための工作を行い、東京に嫁いだいご草ちゃんに迷惑はかけていない、という鶴見の言葉を月島は信じている。その一方で月島は自力で死刑を免れていないという事実を鶴見がわざと暴露したことを悟ってしまい、鶴見の「戦友」という言葉や愛に対する信頼を失った。そのために深く苦しんだ。