メモ帳用ブログ

色々な雑記。

尾形が群れず同胞と信頼関係を築かない山猫的な性格である限り、いくら奥田や鶴見が盛り立てても第七師団長になるのは無理だったと思う。もし陸軍大学校を卒業したことにしてもらえたとしても他の将校と全く会話にならないだろう。尾形の天職はやっぱり自分の技術だけを頼りにできるスナイパーだ。

奥田からしても将校の適性がどう考えてもない尾形をそこまで推すことに何のメリットもないというか、それこそ狡兎死して走狗烹らるになっても何一つおかしくない。

尾形の元ネタの『山猫は眠らない』の主人公のトーマス・ベケットの元ネタのカルロス・ハスコックだって最終階級は1等軍曹だ。戦場で自ら戦う者として最上の階級と言える。カルロス・ハスコックは座射の構え(第二次世界大戦中に考案された)で有名で、尾形がそれと同じ構えを第43話でしていたりもする。言葉で山猫と表現される前から山猫が意識されていたわけだ。

尾形にはじめて山猫の異名がついたのは茨戸編の第58話の「孤高の山猫」のはずだ。尾形はその後も頭を自分で撫でつける毛づくろい的な仕草をはじめとして猫的な仕草をことあるごとにしてきた。最終回で登場する尾形の死をモチーフに描かれたヴァシリの絵も尾形が山猫として表現されているし、題名は山猫の死だ。

集英社による第17巻の商品説明も以下のような文章だ。

「撃つときは必殺でなくてはならない 仕留め損なえば次に狙撃されるのは自分なのだ」 山猫VSロシアンスナイパー、狙撃手たちの日露戦争、延長開戦! 眠るのは、どっちだ!!? そして、尾形、ウイルク、キロランケ、それぞれの過去の暗部が照らされる。超絶好調! 樺太闇鍋ウエスタン・キレ味鋭い第17巻!!!!!!!

ゴールデンカムイ 17/野田サトル | 集英社コミック公式 S-MANGA

尾形から山猫を連想するのはゴールデンカムイの世界の法則のようなものなのだろう。尾形のひねくれていて周囲に合わせず単独行動を好む性格を中傷するために、遡って母親の職業を揶揄する言葉との共通項である山猫と謗られたこともあるが、基本的には尾形が山猫キャラなのは孤高なスナイパーとしての資質を示すための表現だ。まさかいくらゴールデンカムイでも、尾形が売春しているとか、オカマだとか言われているわけではない。上官に取り入って分不相応の力を持った人間はそういう陰口を叩かれがちだが、中尉に目をかられている上等兵という立場でそういう妬みの対象になることはありえない。尾形と鶴見の距離でそういう噂になるというなら、鶴見は月島・宇佐美・鯉登をはじめとした部下たち全員と大乱交していると見なされるだろう。

ただ、これからも繰り返し使用する予定の山猫という異名にマイナスイメージを持たせるのはちょっとアレではある。