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色々な雑記。

芹澤は


教員採用二次試験に草太が現れず、「あいつは自分の扱いが雑なんだよ……腹が立つ……」と鈴芽に愚痴をこぼしてしまった。その前には「ムカつくから二度と顔見せるなって言っといて」とまで言ってしまっていた。ただ、すぐに思い直し、本当は借りている2万円を貸していると鈴芽に嘘をついてまで草太が自分に会いに来るように仕向けている。こういった点から芹澤のほうが草太よりも友人付き合いの機転が利き、これまでも豊富な経験を積んできたことが伝わってくる。
草太は大学で自分の扱いが雑すぎることを芹澤に怒った際、気まずくなって食べかけのカツ丼もそのままに席を立ってしまった。本当は芹澤のことを心配するが故の怒りで愛想を尽かしたのではなかったが、即座に接触を図り直すことができなかった。その口実も思いつかなかったのだろう。おそらく草太はこれまでも只人と深い交友を持ったことがなかった。
そのために程なく家業のせいで長期間LINEの確認もできない状況になろうと、直前に自分からメッセージを送ることすらできなかった。もし芹澤のほうからメッセージを入れてくれていなかったら、草太はもう芹澤とろくに顔を合わせされなくなっていたかもしれない。その場合、見捨てられたことになるのは芹澤よりもむしろ草太のほうだろう。
芹澤がメッセージを送ってくれたから草太はそれに返信できたのだし、そのメッセージがいつまでも既読にならなかったから草太は芹澤に会いに行った。草太に最初に声をかけてくれたのも、それから友人関係が自然消滅しないよう連絡を取り続けてくれたのも、いつも芹澤のほうだった。
草太と友人になれたことや、草太に看病してもらったことで芹澤は草太に救われた。だから芹澤は草太が消えた際に草太を救おうとした。ただ、草太からしたら自分は既に芹澤に救われおり、その恩を返す以上のことをしたつもりはなかったから、芹澤がさらに自分を救いに来ることは全くの予想外だっただろう。