メモ帳用ブログ

色々な雑記。

H2の「代えてやりなよ」から「見たことがないよ」

代えてやりなよ

柳とセンターに慣れない比呂がお見合い。前回食らった3連打と偶然シチュエーションが被る部分があり弱気になる木根。監督の様子を木根がいちいちうかがってしまうのはリアリティのある弱気の出方で見てる方も辛い。

「だれのためにがんばっても、がんばった自分は木根くんのものよ。」こういうことさらっと言ってのけるあたり春華は意外とちゃっかりしてるなぁと思いつつ、確かにそうだと納得させられるところもある。木根の「……なんだかなァ。」と合わせて味わい深いセリフ。

がんばる木根を見て心配になって代えて欲しくなる彼女の美歩と、他人として冷静に見ているひかり。ピッチャーライナーを受け止めて大の字に倒れつつも、ボールは離していない木根が良い。

千川の攻撃で再度相手を引き離し、安心して交代、と思わせたところで比呂がベンチに交代という盛り上がる引き。

本当の自分の限界よりも

明和一の監督はここぞというところでもっともらしく不安を煽っておいて予想を外すのが仕事。外してばっかだと期待が持てなくなるので適度に当てたり、予想と関係ない場面で良いことを言ったりする。

ひかり、古賀監督、比呂の見立てでは木根はまだまだやれる男。一連のセリフはどれも格好良い。まともでない古賀監督の判断に対しまともに慌てる春華も可愛い。比呂の「──いや。 運命を信じてるのさ。」というキメキメなセリフが、完全に流れに乗って感動するシーンとして成立しているのが流石の構成力。渾身のネタが滑るか滑らないかはネタ単体の力よりも流れだ。木根の全力投球と並行して描かれる比呂と英雄の空間を隔てたにらみ合い。明日の2人の試合が運命の試合なら、木根のこの試合も運命の試合。

青空に吸い込まれていく白球でまさかの!?と思わせて、間をたっぷり取りつつ、歓喜の涙を流す木根の様子に。こういう間の取り方はいつもながら名人芸。試合と並行する第三者の日常を描く。自分たちの日常にもふと気がつくと登場人物たちや奇跡がまぎれているような、ただの写実とは違う圧倒的なリアリティ。

ストーリー全体が暗い方向へ傾きかけていた時だけに、H2は前向きな話だという基本姿勢を明確にしておくことは重要。対明和戦で比呂が悪役に回っても、あえて演じているだけで最後は前向きに終われると信じるためにも大切。

がんばったよね

前回のフライがちゃんとキャッチされていた様子を確認。千川対明和一の準決勝が決定したので、その試合に英雄が賭けた気になっているものもひかりが改めて確認。

激励電報で懐かしのキャラ勢ぞろいはいかにもクライマック直前で感慨深い。言葉通りに捉えると最悪な文章を、わざわざ激励電報として送ってくる広田の真意を察して微笑む比呂。

クライマック直前に宿舎を抜け出そうとする比呂。会いたい相手はもちろんひかり。春華ももう既に比呂が言葉通りだけの男ではないことがわかっているので、返答までの間に緊張感があふれる。去年比呂が宿舎を抜け出した時にはひかりに抱きとめられていて、探しに出た春華はそれを見ていた。それでも「8時までには必ず戻ってくるから。」の「戻ってくるから」を信じて春華は「わかった。」と答える。比呂の「ありがと。」も切ない。

戦うんだね

「おれにはわからねえけど、 きっと見つけるよ。」ひかりとの運命的な縁みたいなものを、英雄は自分との間よりも比呂との間に感じている。去年甲子園浜海浜公園で英雄・春華ペアと比呂・ひかり・野田トリオがすれ違った時は、最後まで英雄とひかりは合流できなかった。それでもこの先の準決勝後に、少し時間はかかったがひかりは英雄を甲子園浜海浜公園で見つける。

運命の合流地点めいた甲子園浜海浜公園で会話する比呂とひかり。近くで遊ぶ一家の花火が雰囲気を盛り上げている。夏で恋といえば花火。花火で比呂とひかりの関係が揺らぎかけるイベントは去年の甲子園前にもあった。

去年の比呂の涙の話からひかりの母の話へ、ひかりを励ます比呂の言葉からひかりに励ましてほしいというお願いへ、と会話の流れの連鎖が芸術的。作者の頭の中はどうなっているんだと改めて思い知らされる。この時比呂はまだひかりへの本気の恋が捨てきれてないし、ひかりにとっても比呂は大切な幼なじみ。「がんばれ 負けるな。」という気持ちは本気。立場上許されないから押し込めていた比呂を応援したい気持ちを引き出されて泣くひかりと謝る比呂。ただしひかりは英雄が負けると思ってはいない。このあたりはラフの最終盤の本命は勝ちそうな方で応援したいのは負けそうな方という亜美の気持ちを思い出さなくもない。ラフの試合の結果はわかりきっているとはいえぼかされたけど、H2では勝ちそうな本命が負けて、負けそうと思っていたきょうだい同然の相手が勝つ。

わかってんだろ

うっかり比呂に英雄が言っていたことをバラしてしまう野田。間違いなくご都合展開ではあるんだけど、妙なリアリティを感じる口の滑らせ方。

前回に引き続いてシモネタモードの春華。このあとの言動も含めて、努めて明るく振る舞おうとしているのかも。実は終盤一番真意が読みにくいのは春華。

ひかりが何か言いたそうだったのに英雄は自分の言葉で続きを遮ってしまう。自分の予想通りに比呂がひかりを見つけて何か話しただろうことを察して、少なからず恐れている。英雄は自分がひかりを繋ぎ止めるためには明日の試合に勝つしかないと思い込んでいる。

比呂のスライダーの前振りその2。今までの作中の試合では披露していないだけに、前振りは丁寧に。

明日の試合に賭けられているものを認識した上で、場所を隔てて視線の交錯する比呂と英雄。同じチームだった中学時代の回想。ただし英雄がひかりを賭けているつもりなのに対し、比呂が賭けようとしているのは自分の意気地。比呂が勝たなくてはいけないのは、それによって英雄とひかりが恋愛関係を再確認できると証明するためだ。比呂は試合でも負けを認めてしまったほうが、恋で負けるのもそのせいにできるからむしろスッキリするが、それでも勝たなくてはならない。この場面で英雄はこの先戦う比呂を意識して視線を前にやっているが、比呂は鏡の中の自分を見つめている。

知ってるか?

同日の第一試合、負けた高校が泣き崩れるところから始まるという少年漫画のクライマックスにあるまじき描写。ここから続くクライマックを経て辿り着く結論自体も、少年漫画では相当にあるまじきもの。

試合開始直前に生活感に溢れた会話をしている比呂の両親とひかりの父。運命の試合だろうと人生のほんの通過点でもある。ひかりの父がひとりで見上げる空の高さは妻を失ってからも続く人生の長さ故なのか。

怪物対決にワクワクする自分の弟と合流し、大観衆の中でただ一人心からこの試合を楽しめないだろうひかりを心配するひかりの父。

比呂がわざと英雄に打たれたかねないと心配して(第309話「そんな理由で」)釘を刺す野田。自分がそんなやつだから英雄とひかりが先に進めなかったことに比呂も気付いたらしく、「なんで おれがわざと打たせなきゃいけねえんだよ。」と応え、英雄にも聞こえるように「知ってるか? おれはひかりのことが大好きなんだぜ。」と言う。英雄のほうを向きながら言うだけでなく、「知ってるか?」のフキダシが英雄の頭にかぶることで英雄に強くあてこすっている感じを出しているのが芸コマだ。とうとう本当ににらみ合う英雄と比呂。絵に力が入っている。

見たことがないよ

明和一エース石元の活躍を見せつつ、比呂と野田の活躍も見せる。投球だけでなくうぬぼれかけていた反省も見せ場にするところが渋い。

実況と解説は比呂の制球を今ひとつと判断するが、明和一の稲川監督はこんなすごい国見は見たことがないと言う。ピンチかと思わせて実はすごいというのは印象に残るし、対戦相手ながらそう判断してくれた稲川監督のポイントも上がる。試合開始早々に種明かしを知りたいところで次回に続くという強い引き。